「TBSレトロスペクティブ映画祭 実相寺昭雄特集」5月2日(金)から開催される
TBS 収蔵の貴重なフィルムをデジタル修復して劇場公開する「TBS レトロスペクティブ映画祭」が5月2日から開催される。第1回の寺山修司特集に続く第2回は、実相寺昭雄が特集される。「ウルトラセブン」を始め、ウルトラシリーズで多大な功績を残した実相寺だが、今回の映画祭で公開されるのは、実相寺が当時TBS社員で「まだ何者でもなかった」20代の時期に手がけたドラマ・音楽番組やドキュメンタリーだ。
映画祭をプロデュースした佐井大紀に実相寺昭雄に注目した理由と社員時代の作品から読み取れる実相寺昭雄のある信念を訊く。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『「深夜」の美学』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第11回【前後編の前編。文中一部敬称略】。
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実相寺昭雄作品は「大人の観賞にも耐えうる」
「子供の頃から『ウルトラマン』を通じて実相寺昭雄監督の映像に魅了されてきました」
こう語るのは、映画祭を企画・プロデュースしたTBSの佐井大紀だ。1994年生まれの佐井が実相寺昭雄の携わった作品と触れたのは3~4歳の頃だという。
「僕らの世代だと『ウルトラマンティガ』をリアルタイムで観ていました。そのときはまだ名前も知らなかったのですが、次第にクレジットを意識するようになって、小学校高学年から中学生くらいのときに、『実相寺昭雄』という名前を強く意識するようになりました」
レンタルDVDでウルトラシリーズや特撮テレビドラマ『怪奇大作戦』などの実相寺昭雄の作品を観て、他の演出家の回との違いを感じた。
「実相寺作品の映像は全然違うし、作品の脚本のテーマも結構暗いというか、深いんですよね。子供が観るものではあるけれど、大人の鑑賞にも耐えうるようなものをつくっていて、明らかに作家性が強いなと感じました」
TBS社員時代に大器の片鱗を垣間見る
映画祭では、実相寺昭雄がデビューしたての20代若手社員の頃に手がけた、ドラマ、音楽番組、ドキュメンタリーの計8作品が60年の時を経てスクリーンに蘇る。いずれも『ウルトラマン』以前の作品で、一見“渋い”ラインナップともいえる。
「それは『TBSレトロスペクティブ映画祭』の理念でもあります。第1回の寺山修司でも、今回の実相寺昭雄でも、名前は知られているけど、なかなか観られないものをまずやろうということが一番大きな理由です。
実際に観てみると、たとえば坂本九が土管のある空き地で歌っていたり、工場がいっぱい映っていたり、のちに『狙われた街』(『ウルトラセブン』第8話」)などで使われているモチーフがすでに登場しています。彼が本当に撮りたかったものが、何年も前から内にあって、それが『ウルトラマン』で結実したのではないかと。特撮ファンの方にも、新しい発見があると思います」