ドラマ『あなたを奪ったその日から』主演の北川景子(時事通信フォト)
北川景子主演でスタート早々、大きな話題を集めたのがドラマ『あなたを奪ったその日から』だ。“子どもの誘拐”をテーマにした同ドラマには、放送直後からさまざまな反応が飛び交った。過去には同じ“子どもの誘拐”のテーマで名作もある。『あなたを奪ったその日から』は多くの共感を呼び、ヒット作となることができるのか? そのポイントについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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21日(月)夜、ドラマ『あなたを奪ったその日から』(カンテレ制作・フジテレビ系)がスタートしました。
同作のあらすじは、食品事故で3歳の娘を失った母親・中越紘海(北川景子)が事故を起こした結城旭(大森南朋)の娘・萌子(倉田瑛茉)を誘拐し、復讐を果たそうとするが、そこには大きな誤算があった。紘海は食品事故の真相を追いながら、自分の犯した罪に苦しみ、葛藤し、周囲を巻き込みながらも生きていく……。
第1話では、愛娘を失った紘海の絶望が描かれ、旭や萌子を殺めようとするシーンなどショッキングな展開の連続で、ネット上にさまざまな反響があがっていました。
「主人公女性が子どもを誘拐する」という筋書きは、2010年に檀れいさんと北乃きいさんでドラマ、2011年に井上真央さんと永作博美さんで映画が放送・公開された『八日目の蝉』。2010年に松雪泰子さんと芦田愛菜さんで放送された『Mother』(日本テレビ系)と同じ。
どちらも多くの人々が見た名作だけに『あなたを奪ったその日から』の放送が発表されたとき、ネット上には両作のタイトルがあがっていました。設定が似ているだけに『あなたを奪ったその日から』は両作との比較は避けられないでしょう。
制作サイドはどんな差別化で勝機を見出しているのか。また、何が成否の鍵を握りそうなのでしょうか。
女性層からの支持と誘拐の免罪符
『八日目の蝉』と『Mother』のヒットには「特に女性からの熱烈な支持を集めた」という共通点がありました。しかも30代以上は自分に主人公を重ね、20代以下は誘拐された娘に自分を重ねるなど、それぞれの年代がネット上につぶやいていたことも特徴の1つ。それだけ語りたくなる作品だったのでしょう。
なかでも最大のポイントは、誘拐という罪を犯してしまう主人公女性に共感できるか。
『八日目の蝉』は不倫相手の子を堕胎したことで子どもを産めない体になった主人公・野々宮希和子が、彼の子を衝動的に連れ去るという「不倫と堕胎」。一方、『Mother』は実の母に捨てられた過去を持つ小学校教師が児童虐待を受けている生徒の母親になろうとする「孤独と虐待」が誘拐の背景にありました。
その点、『あなたを奪ったその日から』における誘拐の背景は「子どもの死と復讐」。『八日目の蝉』や『Mother』とは異なる背景があるため、ある程度は誘拐の免罪符になり、紘海への共感につながるかもしれません。
また、『八日目の蝉』と『Mother』が女性の支持が厚かったのは、「“母性”について考えさせられるシーンが多かった」という理由もありました。
「母子とは」「血のつながりとは」「この感情は母性なのか、それとも同情や執着なのか」などと自分に置き換えて考えるシーンが多く、主人公への感情移入につながっていました。『あなたを奪ったその日から』も同様に母性について考えさせられる。特に主人公を自分に置き換えて考えさせられるシーンが増えるほど、女性層の支持を集めていくでしょう。