制作発表では、主演の北川景子をはじめ、大森南朋、平祐奈、阿部亮平(Snow Man)などが登壇した(番組公式HP)
鍵を握る北川景子の繊細な心理描写
主人公女性の切実さと葛藤、徐々に芽生える母性などを伝えるために主演女優の演技も成否を分けるポイント。
第1話では北川景子さんが娘を失って泣き崩れ、包丁を手に旭を狙い、亡き娘のリボンを萌子の首にかけながらも思い留まり……などの熱演を見せました。
視聴者を引きつけたい初回だけに過激なシーンが多かったものの、今後は戸惑い、葛藤、後悔、芽生えるであろう愛情などの繊細な心理描写をどう演じていくのか。『八日目の蝉』の檀れいさんと永作博美さん、『Mother』の松雪泰子さんはその点を称賛されただけに、成否の鍵を握るポイントになりそうです。
また、『Mother』で芦田愛菜さんの演技が注目を集めたように子役の存在感も重要でしょう。
その点、誘拐された萌子を演じる倉田瑛茉さんは、2023年の日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)で鈴木亮平さんの娘役、2024年の『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)で松村北斗さんの娘役と、立て続けにメインの子役を演じるなど5歳ながら実績十分。実母の顔を知らず自分を誘拐した紘海を母親と慕うなどの愛くるしい姿をどのように引き出していくのか。さらに成長した萌子を演じる一色香澄さんの演技も含め、監督たちの演出も鍵を握りそうです。
最後に“誘拐”がテーマの主な連ドラをさかのぼっていくと……2022年に主人公男性の娘が誘拐される『マイファミリー』(TBS系)、2020年に主人公男性の娘が誘拐される『10の秘密』(カンテレ制作・フジテレビ系)、さらに13歳の少女が誘拐され13年後に発見されたあとの日々を描いた『13』(東海テレビ制作・フジテレビ系)。
2017年に主人公女性が子供を誘拐される『母になる』(日本テレビ系)、2000年に主人公女性が息子を誘拐される『リミット もしも、わが子が…』(読売テレビ制作・日本テレビ系)、1978年に主人公男性が娘を誘拐される『犬笛・娘よ、生命の笛を吹け』(日本テレビ系)など、“誘拐”は年代を問わず連ドラのテーマであり続けています。
それでも女性視聴者の心を最もつかんだのは、やはり『八日目の蝉』と『Mother』であり、『あなたを奪ったその日から』はその2作に追いつき追い越せるか。今春の注目作であることは間違いないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。