47歳で12歳年下の男性と結婚し、長い不妊治療を経て2012年、53歳で男児を出産した坂上みき(66)(SNSより)
有効性のある「年齢」は
とは言え、子どもを持つにはパートナーとの婚姻関係ありきが前提で考えられる日本では、パートナー不在で妊娠・出産の計画を立てるのは、雲をつかむような話でもある。だがタイムリミットを考えると、パートナー探しにも、ある程度の計画性が必要というわけだ。「そんなにうまくいったら苦労しない」という声も聞こえてきそうだが、凍結卵子のコストパフォーマンスを考えても、ある程度の計画をもって臨むに越したことはなさそうだ。
卵子凍結が必要かどうかは、それぞれの年齢や状況によっても変わってくる。「例えば」と片桐教授は例を挙げる。健康な28歳の人が、32歳で妊娠を計画したいなら、卵子凍結は不要かもしれない。だが28歳の人が、43歳で妊娠したいなら、凍結を薦める、と。女性が35歳未満で、自然妊娠が望める場合、凍結より妊娠を先送りする原因を解決した方が良いのではと提案することもある。
「卵子凍結は、皆に必要な技術ではありません。例えば30歳の人が、34歳ぐらいまでに産もうと思うのなら、凍結を急ぐより、ともに子を育てていくパートナーとの出会いの方が優先される場合もある。自分にとって必要な医療かどうかは、いつ頃妊娠・出産したいかという計画に関わってきます」(同)
一方、凍結した卵子の使用率が「6割近く」と高いのは、卵子凍結の保管サービスやカウンセリングを行う香川則子さんが代表を務めるプリンセスバンクだ。凍結前のカウンセリングに始まり、凍結後も利用者の相談に乗るなどの手厚いサービスを行う。同社の凍結卵子の保管料は、その相談料も込みとして設定されている。充実したカウンセリング体制が、凍結卵子の使用率を上げている理由の一つだと、香川さんは話す。
「卵子凍結は、身体的にも金銭的にも、それなりの負担をかけて行うわけですから、基本的には凍結卵子をいずれ使う前提でお話しします。そもそも本当に卵子凍結が必要な人かな?というところからカウンセリングを始め、何が心配で何に困っているのか、丁寧に話を聞きます」(香川さん)
凍結卵子を預かり続けながらフォローアップする体制もある。何年ぐらいで使うか、あるいは廃棄するか。パートナーが見つからないなら、出会いをどうするか。具体的な部分まで突っ込んで話す。
「卵子を採って凍結した、それで終わりではありません。卵子凍結を意味があるものにするためのフォローアップも大切です」(同)