そうはいっても技術者にとっては、失敗を讃えられるのは気恥ずかしい。また、あくまで“成功に向けての失敗”という意識から、高岡さんたちは大賞受賞をバネに180か所以上の集計数値を再活用。数値に沿って検査の手順を動画撮影し、わかりやすいマニュアルの作成を進め、検査方法の共有や教育に役立てている。
この失敗大賞を設けた背景には、どういういきさつがあったのか? マツダ執行役員 本社工場長の圓山雅俊さんはこう語る。
「数年前、私が海外工場から本社工場に戻ってきたとき、何となく委縮しがちな社員たちの様子を感じました。工場やラインでは、高い技術水準を維持しつつ、安全でスムーズな作業体制を第一に求められることが多いため、ついほめるより叱ることのほうが多くなりがちです。その蓄積が、工場の現場において、マツダのDNAである“あくなき挑戦”の気風を薄れさせていると感じ、すぐにでも何かやらなければ! と思ったことが『失敗大賞』のスタートです」(圓山工場長)