潜入取材の際に、センターに置いてあった広報誌や労組の会報に載っていたいくつかの数字を見ることができたので、そうした数字を加えて再度、ヤマトの広報に取材を申し込んだら、「え、まさか潜入取材をされてるんじゃないですよね?」と言われました。そのときはとぼけて「いろんな手段で情報を入手させていただいております」と答えたのですが、その後、私のことを調べたんでしょうね、潜入取材から1か月くらいたって長尾裕さん(現在のヤマト運輸社長)の取材がOKになって出向くと、インタビューの中で「横田さんは潜入しているからわかっていると思いますが……」と何回か言われたんです。
森:2015年の秋頃、小学館ノンフィクション大賞をいただいた後、ヤマトの労組の方にお会いしたら、横田さんの本の話になって、「彼が羽田クロノゲートで働いているっていう話は、私の部署にも報告が来ましたよ」と仰っていました。なので、ヤマトとしても、どう書かれるのか想定した上で、横田さんを野放しにしていたところもあるのかもしれないですね。
横田:それは知りませんでした。ヤマトも潜入取材だけで書かれるよりは、ちゃんと取材を受けておいたほうがいいと判断したのではないでしょうか。
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年、福岡県生まれ。ジャーナリスト。物流業界紙『輸送経済』の記者、編集者を務めた後、1999年よりフリーランスに。著書に『仁義なき宅配』『ユニクロ帝国の光と影』などがある。
森健(もり・けん)/1968年、東京都生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学在学中からライター活動を始め、1996年よりフリーランスに。著書に『小倉昌男 祈りと経営』『「つなみ」の子どもたち』などがある。
(第3回へ続く)
■取材・構成/ツカダマスヒロ