お正月気分が落ち着くと、街はバレンタインデー一色になる。デパートの催事もチョコレートにまつわるものが始まり、珍しい美味しいチョコレートを食べられる季節だと自分用に買う人も最近は多い。イラクの小児がんの子どもの医療支援や福島支援のための「チョコ募金」が始まったときの思い出を、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が綴る。
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毎年この時期になると、ぼくの頭は甘いチョコレートのことでいっぱいになる。ぼくが代表をしている日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)が行なっている「チョコ募金」のことだ。
イラクの小児がんの子どもの医療支援や福島支援のために、募金をいただいた方にチョコレートをプレゼントするというもの。毎年、チョコレートの缶にイラクの子どもたちが描いたイラストをプリントしているが、この缶を楽しみに募金してくれる人も少なくない。
今年は、19歳のサブリーン、通称スースが子どもの絵を描いてくれた。明るく、ポップな印象のイラストだが、よく見ると子どもたちは感染予防のマスクをし、点滴を受けていたりする。小児がんや小児白血病の子どもたちにとっては、日常の風景である。
マスクといえば、ぼくにはちょっと感慨深い。JIM-NETは日本から看護師を派遣し、イラクの病院スタッフに、感染症対策をレクチャーしたことがある。マスクと手洗いが徹底されていることが、スースの絵からも伝わってきた。
スースのイラストには、サッカー選手にあこがれたり、ペットをかわいがったりする子どもも描かれている。厳しい闘病をしている子どもも多いが、彼らの生活が病気一色でないことにも、どこかほっとしてしまう。