実は、スース自身、重い病気と闘ってきた。10歳で卵巣がんを発症。手術をしたが再発の地獄をみた。抗がん剤治療でがんを抑え込み、現在は完治に近い状態にまでなった。
彼女はJIM-NETのスタッフになり、イラク南部のバスラの小児がん病院で、子どもたちの先生として働いている。現在、闘病中の子どもたちにとっては、がんを克服したスースは、あこがれの存在であり、心の支えにもなっていることだろう。
スースは、自身の闘病時代、ある少女から大きな影響を受けている。スースの本名と同じサブリーンという名の少女である。年はスースより少しお姉さんだった。
1994年生まれのサブリーンは、イラク戦争が始まったとき9歳。その2年後、11歳で目のがんになった。ぼくたちの支援で手術を受けたが、彼女のがんは質が悪く、がんは体中に浸潤していった。脳へと転移が始まったときには、強烈な頭痛に苦しんだ。当時イラクでは放射線治療ができず、隣国イランまで治療に連れて行ったこともある。ぼくたちの支援によって、当時としてのできるだけの治療を受けられたことを、彼女はよく理解していて、ぼくたちに感謝してくれた。
でも、いちばん喜んだのは、病院で勉強できたことだ。彼女の家は貧しく、学校にも行けなかった。ぼくたちは元教師をスタッフに迎え、院内学級を始めていた。サブリーンはそこで初めて勉強し、絵を描くことを覚えた。
ぼくたちはサブリーンの絵を、チョコ募金に添えることにした。決して上手な絵ではないが、多くの人の目にとまって、たくさんの人がイラクの子どもの医療支援に協力してくれることとなった。