◆金に物を言わせてやらかしてるよ、と思ってる人もいますよ
──先に、前澤社長から声をかけられた際も「本音を隠さず語る人材」を求めているという話がありました。いま、御社における田端さんの役割とは何ですか?
田端:僕は、サラリーマンの気持ちもわかるし、一方で、経営者の思考回路もわかるんですね。だからその間に立って、双方の言葉を翻訳する。それが僕の仕事のひとつだと思っています。もちろん経営者にもいろんなタイプがいるんですが、たとえば前澤と堀江さんに共通するのはサラリーマン経験が一秒もないこと。就職したことがない人と、サラリーマンって、やっぱり思考回路が違うんです。
「コミュニケーションデザイン室 室長」という立場で言えば、コミュニケーションって相手があって成立すること。だから社外やお客様から、会社としてのスタートトゥデイや「ZOZOTOWN」、あるいはブランドとしてのZOZOや、社長はこう見られていますよ、こんなふうに思われていますよ、ということを前澤には言いますね。
──例えばどんなことを仰いましたか?
田端:一つ挙げるなら、失礼かもしれないけど、大好きだから申し上げるんですけど、前澤さんの最終学歴は高卒ですよね。これは「資産」だと言いました。
インターネットやシリコンバレーはもともとカウンターカルチャーの匂いがあったのに、今やグーグルでも、アマゾンでもフェイスブックでも、ピカピカのエリートが働く時代になってしまった。経営者でも、たとえば楽天の三木谷(浩史)社長はピカピカの経歴のエリート経営者でしょう。その真逆に前澤さんはいる。若い頃、バンドのスタジオ代を稼ぐために建築や工事現場でバイトをしていたから、倉庫に行くと、俺、フォークリフトの運転ができるんだよね、と言ったりする。どちらがいい悪いではないし、どちらも素晴らしいんだけど、こういう時代だからこそ、前澤的な価値は際立つ。僕自身もそういうパンクさが好きなんです。
やっぱり社員は社長に向かって言いにくいことがあるんです。社長だって、言われなくてもわかってるよ、ということもあるでしょうし。それでも、あえて僕は言います。前澤さんが、たとえ芸術へのピュアな思いでバスキアの絵を買っていても、お金持ちが、金に物を言わせてやらかしてるよ、と思ってる人もいますよ、とか。