上半期1度も登場しなかった田原と聖子が、下半期には郷ひろみや西城秀樹、山口百恵のランクイン回数を抜き去り、時代の寵児となったのだ。

『ザ・ベストテン』は人気者の2人を近寄らせないと約束しながらも、親密に見えるような演出をした。1981年9月17日、3位の田原俊彦が『悲しみTOOヤング』を歌い終えると、スタジオには雷鳴とともに雨が降り出し、久米宏が意味深なナレーションを読み上げた。

〈ほとんどの人が田原くんのことを“トシちゃん”と呼ぶ中で、聖子さんだけは“田原くん”となぜか呼ぶそうです。そんな聖子さんを、田原くんは「最近色っぽくなったなあ」と思ってるそうですよ。さぁ、今週第2位です〉

 パラソルを持った聖子は田原に近寄って相合傘をしながら、『白いパラソル』を歌い始めた。この日は3週休養していた久米宏の復帰が話題になり、歴代最高視聴率41.9%を記録した。

 このように番組は2人の仲を演出して視聴者を惹き付けることもあったが、1983年3月24日に3位『秘密の花園』松田聖子、2位『ピエロ』田原俊彦が一緒に登場すると、久米が「2人をくっつけないことを気にすることを辞めよう、という終結宣言を出そうと思っています」と述べ、2人は握手したままセットに向かった。

 田原と聖子は当時を振り返り、1994年5月9日放送の『ふたりのビッグショー』(NHK、視聴率10.9%)でこう語っている。

聖子:一緒にデビューして、同級生みたいな時があって、まあなんか噂されたり、男の子と女の子のね。そんなこともあったけど、今は私と田原くんって“同士”って、そんな感じがしない?
田原:沖田(総司)! 土方(歳三)! みたいな。

 1985年4月18日の『ザ・ベストテン』で、松田聖子は神田正輝との結婚後の休業を宣言。翌年には娘・沙也加を出産した。1987年に復帰すると、『Strawberry Time』で4週連続1位を獲得。結婚前と変わらない人気を見せつけ、“ママドル”として新しい道を切り開いた。

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