コロナ不況がじわじわと顕在化する中、不動産市場は住宅ローンの返済に窮する人たちのマイホーム売却が進んだり、高騰を続けてきた“局地バブル”の崩壊が予測されたりと混沌としてきた。そんな中、虎視眈々と日本の不動産を狙っていると見られるのが“中国マネー”だ。再び中国人による「タワマン爆買い」は起きるのか──。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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首都圏の住宅市場はかなりイレギュラーな様相になってきた。まず、テレワークの普及が思わぬ需要を生み出している。
会社に行かなくてもよくなったけれど、自宅で仕事をするには狭かったり子どもがいたりと、今の住まいでは不都合な人々が大量に発生した。彼らが広さと部屋数を増やすために「すぐに住める」中古住宅や戸建てを購入しているのだ。都心近郊や湾岸の中古マンション、新築戸建てに需要が集まっているのはそのためだと思われる。
だが、こういう動きも、まもなく一巡するはずだ。今後は、住宅ローンの返済に窮した人々が任意売却に向かう動きが目立ってくるのではなかろうか。コロナ不況が住宅市場に影響する新たな展開である。
もうひとつ、東京の住宅市場の今後に予想されそうな展開がある。それは米中関係の悪化による「逃避マネー」の流入である。
アメリカと中国は今、政治的にも経済的にも対立を深めている。実現するか否かは分からないが、トランプ大統領は「中国に新型コロナ蔓延の責任を取らせる」という趣旨の発言を度々行っている。
よく知られている通り、中国では高位にある人々は個人的な資産を海外に移転させている。家族と資産は海外に置いて、自分も地位が危うくなったらいつでも中国から逃げ出せるように準備をしているのだ。そういった中国の高級官僚を「裸官」と呼ぶそうだ。
彼らは自分の母国である中国をまったく信頼していない。何かあればいつでも海外へ逃亡する覚悟を決めている。
そんな彼らが資産を移す先は、これまでは軽課税国のタックス・ヘイブンであったり、スイスの銀行、あるいはアメリカやカナダ、オーストラリアでの不動産購入だった。
ところが、アメリカ政府は中国共産党の要人たちが海外に持つ銀行口座などの情報を把握しており、必要に応じて凍結するのではないかという情報がある。また、アメリカは言うまでもなくカナダとはファーウェイの問題があったり、オーストラリアでは内政介入が露見したりと、ここのところ英語圏諸国と中国の外交関係が悪化している。
そういった国で不動産を所有していることに、中国人たちは不安を抱いても不思議はない。何といっても彼らの祖国では政府の命令ひとつで不動産の所有権など簡単に剥がされてしまうのだ。