札幌の事件では容疑者の動きを封じるなど「さすまた」効果が明らかに。写真は2021年12月に実施された亀有署とJR東日本が実施した訓練。警察官が駅員らにさすまたの使い方などを指導した(時事通信フォト)
都会も地方も関係無く「ヤバい人」が出現する
「痛いっ!」
いったん池袋駅に戻る。声に振り返ると女性が腕を抑えている。また「ぶつかり」だろうか。ぶつかった相手もわからないままに女性は険しい顔で歩いて行った。それにしても池袋駅は多すぎる。実際、12月2日にはこの池袋駅地下通路ですれ違いざまに女性の顔を殴ったとして23歳の公認会計士の男が逮捕された。この男は11月にも池袋駅付近で別の女性にひざ蹴りをしたとして再逮捕されている。顔面パンチにひざ蹴り、もはや「ぶつかり」どころではない。普通の人が何かのきっかけで故意にぶつかるモンスター「ヤバい人」になる。
先の内閣府の調査と警察白書、筆者も各地を歩く限りの感想としては「治安が悪くなった」と思わざるを得ない。減ったのはあくまで刑法犯認知件数ということで、表沙汰にならない小さないざこざや目に見えない犯罪は増えたとするのが自然だろう。大きな犯罪は減ったが、個々人に降りかかるわけのわからない犯罪、犯罪に満たない危険が増えたということか。老若男女問わず、日本中で普通の顔をした「ヤバい人」が跋扈している。実際、今月前半だけでもわけのわからない「ヤバい人」の事件が目白押しだ。
「コロナでジムが休みだからイライラした」
12月3日、奈良県橿原市の百貨店屋上から35歳の無職男がコンクリートブロックとレンガを投げ落とした。コンクリートブロックは約3キロ、レンガはおよそ1キロで、直撃すれば間違いなく大怪我、下手すると死ぬ。男は犯行を認め「当たると死ぬとわかっていた」と供述したとのことで、まさしく「ヤバい人」である。そもそもスポーツジムが休みのこととブロックやレンガを落とすことに何の関係があるのかわからない。11月には女子中学生が大阪市住之江区の大型ディスカウント店の屋上から同じようにカートを落とした殺人未遂容疑で逮捕されている。今年始めにも東京都板橋区のショッピングセンターで故意にカートを落としたとして都立高校に通う少年2人が逮捕された。
「悪口を言われた」
12月6日、東京都北区で56歳の無職男が放置自転車の管理施設で70代の男性職員に「何見ているんだ」と怒鳴って顔面を踏みつけたあげくに携帯電話を奪って逮捕された。何もしていないのに悪口を言われたので殴ったと供述しているが、それと暴行は別問題だろう。同日には札幌市西区のショッピングモールのお茶屋さんで全身黒ずくめの59歳男が大暴れ、幸いけが人はなかったが店を破壊しなくてもいいのに。