壊れていく家族について冷静に書かれた本でありつつ、いなくなってしまった家族に対する愛情も感じさせる。
「仲の良い時期だって、結構あったんです。4人集まると良くないんですけど(笑い)、私と父、兄と母のコンビはうまくいっていたし、いい思い出もたくさんあります。私がいまこうして生きていられるのは両親や兄ちゃんがいてくれたからで、決して『毒親』ではないんです。その中で兄は、いろいろ割を食ったかなという感じはしますけど」
『兄の終い』にも、今回の『家族』にも、読者からの反響が数多く寄せられているそうだ。
「いろんな年代のかたから、すごくたくさん手紙をいただいています。『兄の終い』には、私も家族の片づけに行ったというかたや、私は行かずに完全に放棄したというかたも。引きこもりの弟がいて、何十年か後に自分が看取ることになると思っていまから心配だという人もいました。
私、仲良し家族がうらやましかったんです。うちのような問題の多い家族は少数派だと思ってたんですけど、意外にそうでもないんだな、とすごくびっくりしました。家族ってなかなか離れられるものではないし、やっぱり難しいんですね。仲良し家族はそんなにいないとわかって、ちょっとほっとしたところがあります」
【プロフィール】
村井理子(むらい・りこ)/1970年静岡県生まれ。翻訳家・エッセイスト。翻訳書に『ヘンテコピープルUSA』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『人間をお休みしてヤギになってみた結果』『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『黄金州の殺人鬼』『エデュケーション』『メイドの手帖』など。著書に『ブッシュ妄言録』『犬がいるから』『犬ニモマケズ』『ハリー、大きな幸せ』『全員悪人』『兄の終い』『村井さんちの生活』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』など。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2022年3月17日号