スポーツ

高校野球「0-82」記録的大敗の「わせがく高校」甲子園にはない不登校球児の青春 密着取材

今夏の千葉県大会で、記録的な大差がついた試合として注目を集めた

今夏の千葉県大会で、記録的な大差がついた試合として注目を集めた

 夏の甲子園は8月22日にいよいよ決勝を迎え、仙台育英(宮城)と下関国際(山口)がともに初優勝を懸けてぶつかり合う。そうした頂点を目指す戦いの過程となるこの夏の地方大会で注目を集めたのが、千葉県大会での一戦だ。最終スコアは「0-82」という記録的なものに。大敗を喫した「わせがく高校」とは、どんな野球部なのか。同校野球部に密着取材した経験を持つノンフィクションライター・柳川悠二氏(新刊『甲子園と令和の怪物』著者)がレポートする。【前後編の前編】

 * * *
 この夏の地方大会が始まって間もない7月11日、秋田県のこまちスタジアムで金足農業対ノースアジア大明桜の試合を取材していた私の携帯電話に、突然、LINEの連絡が入った。

〈千葉に行かなくていいんですか!?〉

 何事かと思ったが、同業者からの連絡であったために、千葉大会で何かが起きているのだろうと察し、すぐにバーチャル高校野球を開いた。

 なるほど、これは事件だ。

「千葉学芸対わせがく」の試合が、2回を終えて千葉学芸が65対0と大量リードしていた。千葉学芸は先攻のため、あと3イニングの攻撃の機会がある。もしかすると1998年の青森大会で起きた東奥義塾対深浦の「122対0」という史上最多得点試合の記録が更新されるかもしれない。

 同業の彼が連絡してくれたのには、もう一つ、理由がある。私は2009年に、この試合で大量失点を喫しているわせがくの硬式野球部を題材にした単行本『最弱ナイン』(KADOKAWA)を出版した。そのことを覚えていてくれたのだ。

 正式名称を「わせがく高等学校」というこの学校について詳しく知る人は千葉県民でもさほど多くないだろう。早稲田予備校を運営する学校法人・早稲田学園によって2003年に設立された広域通信制の学校だ。ちなみに早稲田大学とは関係がない。千葉のほかに、東京や埼玉、茨城、群馬にキャンパスがある。中心は千葉県香取郡多古町にある多古本校だが、野球部のナインは船橋や柏、勝田台など千葉県内の他のキャンパスの生徒も含まれていた。

関連記事

トピックス

タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《虫のようなものがチャーシューの上を…動画投稿で物議》人気ラーメンチェーン店「来来亭」で異物混入疑惑が浮上【事実確認への同社回答】
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト