巨人時代、戸郷翔征とバッテリーを組んだ炭谷銀仁朗(時事通信フォト)

巨人時代、戸郷翔征とバッテリーを組んだ炭谷銀仁朗(時事通信フォト)

数字以上に貢献度が高かった炭谷銀仁朗

 槙原は2年目の1983年、藤田監督に抜擢されて12勝を挙げる。しかし、翌年は8勝をマークするも防御率4.70と打ち込まれるケースが目立ち、翌々年は故障もあって4勝止まりだった。その槙原を変えたのが有田のリードだった。女房役が山倉から有田に変わった1986年8月、槙原は3完封を含む4連続完投勝利、防御率0.63で月間MVPを受賞した。

 斎藤は2年目4勝、3年目12勝とエースへの階段を登っていったが、5年目は0勝に終わる。しかし、藤田元司監督が復帰した7年目の1989年、強気に内角を要求する中尾とバッテリーを組んで“ノミの心臓”を克服し、20勝で最多勝に輝き、沢村賞も受賞した。

「2人とも移籍したベテラン捕手の存在がなければ、のちに三本柱と呼ばれるほどの投手に成長したかわかりません。それくらい、キャッチャーのリードは大事なんです。当時、現役だった原監督は2人の変身ぶりを見ていた。だから、3次政権になった時、西武から経験のある炭谷銀仁朗を獲得したのだと思いました。

 実際、炭谷は若い戸郷翔征や高橋優貴とバッテリーを組み、彼らの成長に一役買った。2019年、2020年と連覇した時、数字に現れる以上に炭谷の貢献度は高かった。ベテラン捕手の経験は何者にも代え難いんです。今年不調の高橋も炭谷がいれば、復調のヒントを掴めたのではないか」

 その炭谷は2021年7月、金銭トレードで楽天に移籍した。

「若手投手陣が苦しんでいる今年の巨人を見れば、『もし炭谷がいたら』と思うファンは少なくないでしょう。もっと試合に出たいという炭谷の意志を尊重した形とはいえ、原監督も悔やんでいるのではないでしょうか。

 そもそも楽天から話があっても、戦力として考えているなら本人に伝えないですよね。伝達している時点で、トレードに出しても構わないという姿勢が見て取れる。それを炭谷が敏感に読み取って、移籍を志願したとも考えられます。当時2連覇中で、3連覇も射程圏内にあった原監督に油断や慢心があったのかもしれません」

 若手投手陣の成長に欠かせないベテラン捕手を自ら手放してしまった巨人。今年の苦戦は必然なのかもしれない。

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