2021年5月の全仏オープンでは、会見をめぐる振る舞いが大きな問題となった。大会出場時の規約で、選手は記者会見に応じることが義務となっていた。しかし、大坂は会見を拒否。大会側から約160万円の罰金を科されると、翌日に棄権を発表した。
「会見に応じない理由として、彼女は自身がうつ病に苦しんできたことを告白しました。コートで浴びたブーイングを知っているほかの選手が彼女を擁護するコメントを出すなどし、大きな反響を巻き起こしました」(前出・スポーツライター)
その後、大坂はメンタルヘルスの問題から休養に入り、世界ランクは一時85位にまでダウンした。一方で、多くの企業が彼女に注目した。スポーツブランドやファッションブランドが次々に彼女を広告塔に指名し、2022年5月に米経済誌『フォーブス』が発表した長者番付によると、女子アスリートのなかでトップにランクイン。年収は約76億円にも上るという。
「彼女はインスタグラムのフォロワーが約276万人いて、絶大な発信力を持っています。それだけでなく、アメリカ育ちながらハイチと日本にルーツを持ち、メンタルヘルスの問題とも向き合っている。“多様性”の象徴でもあるのです」(広告会社関係者)
大坂自身もコートの外に目を向けることが増え、2022年5月には「スポーツの境界を超えて、アクティビストとして活動したい」と会社を設立。慈善活動や投資、ブランドビジネスなどを手がけていくという。マルチな活動に、テニスとの関係が希薄になっているように感じた人も多かったようだ。テニス協会関係者が言う。
「アスリートとして活躍するには、時には厳しいアドバイスをしてくれるコーチが必要です。しかし、大坂選手は今年の7月に意見の食い違いからコーチとの契約を解消しています。プレーを見ていても、以前より体のキレが悪くなっている。チーム体制が万全ではないように思えます」
ただ1人だけ、大坂にもの申したのが、伊達だった。
観客にイラ立ち会見を放棄した伊達
伊達が日本テニス協会理事に就任したのは、東京五輪を目前に控えた昨年6月のこと。
「協会は大坂選手にメダルを期待しましたが、結果は3回戦での敗退だった。五輪でも彼女はマイクを向けられたくなかったのか、記者の待機するミックスゾーンを通らなかった。協会幹部が必死に説得して連れ戻すなど、試合の結果以外でもハラハラすることがあったようです」(スポーツ紙記者)
前出のテニス協会関係者はブログでの発言の裏には、伊達自身の経験があるのではないかと話す。
「伊達さんも現役時代、ミスをした後にため息をつく観客にコート上でイラ立ちを見せたことがあります。大坂選手と同じように、会見を放棄して罰金を科されたこともありましたね」
高校卒業後にプロに転向した伊達は、世界ランク4位にまで上り詰めたが、26才のときに突然引退している。
「当時、選手として絶頂期にあっただけに、周囲は仰天しました。伊達さんは当時を振り返って『テニスが嫌いになった。プレッシャーに押しつぶされそうで、逃げたかった』と話しています。彼女には大坂選手の気持ちが痛いほど理解できるのでしょう」(前出・テニス協会関係者)