そしゃく回数を増やす
【1】かまぼこを食べる
松原氏が認知症予防で重視したのが「そしゃく」、つまりものを噛むことだった。従来の研究で脳内の血流促進が認知症予防に繋がることが分かっており、松原氏はその手段として食事でのそしゃくを大切にした。
そしゃく時に大脳皮質の血流量が増加することや、「かまぼこ」を噛むと脳に血液を送る総頸動脈の血流が増えたという研究結果に着目した松原氏は、かまぼこやそれに類する硬さの食べ物を好んで食べていたそうだ。
【2】食後に1枚のガム
これもそしゃくに関係する習慣の一つ。くるみなどナッツ類を多く食べていた弥生時代と現代人を比べると、一回の食事でのそしゃく回数はおよそ4000回から620回まで、6分の1以下に低下しているとされる。
松原氏はこの点を鑑みて、毎食後にガムを噛むことを習慣にしていた。
「松原先生はよく『転ばぬ先の杖』ならぬ『転ばぬ先のガム』と言っていました」(斎藤氏)
一枚のガムを味がなくなるまで噛むと約550回のそしゃくが必要になり、一日のそしゃく回数を手軽に増やせるのだ。
【3】毎朝の目玉焼き
大の卵好きだった松原氏は、毎朝かならず目玉焼きを食べていた。
高齢者には欠かせないタンパク質の摂取に加え、卵黄に含まれるレシチンは脳内神経伝達物質のアセチルコリンの原料になる。アルツハイマー型認知症患者ではこのアセチルコリンの減少が確認されていたこともあり、松原氏は卵の認知症予防効果を信じていた。
【4】歯磨きは歯間ブラシで
食後の歯磨きにも松原氏は気を遣った。電動歯ブラシで入念に磨いた後は、歯間ブラシも使用していたという。
「歯磨きもまた認知症予防には欠かせないと力説していました」(同前)
その理由が歯周病菌だ。近年の研究で、体内の免疫細胞が歯周病菌に晒され続けるとアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを作り出すことが分かった。この事実が松原氏の歯磨き熱に拍車をかけたそうだ。
【5】朝昼夕にペットボトル1本の水を飲む
松原氏は意識的によく水を飲む人だった。朝、昼、夕の3回、500のペットボトルを空にした。水分補給が十分でないと血液がドロドロになり、血流が滞るからだ。とくに高齢者は喉の渇きを検知する脳奥の「口渇中枢」の働きが鈍るため、脱水症を起こしやすいという。
たとえトイレに行く回数が増えたとしても水分補給を優先するべきだと松原氏は説いた。