お洒落に人一倍気を配る

【6】30分に1回立つ

 飲食以外にも、松原氏のボケない習慣は多数あった。その一つが、頻繁に「立つ」ことだ。

 診察の合間など、30分に1度は必ず立ち上がり、歩き回った。座りっぱなしが全身の血流を低下させ、認知症を誘発するからだ。WHO(世界保健機構)も2011年に「座って動かない生活は肥満、糖尿病、高血圧、脳血管疾患、そして認知症を誘発する」と警告している。

「コロナ禍のステイホームで、座りっぱなしの人が多くなったと松原先生は嘆いていました。本来はランニングなど有酸素運動が良いのでしょうが、高齢者は毎日の習慣にはしづらい。そこで30分に1度は立つことを大切にしていました」(同前)

【7】テイクアウトではなく自炊する

 ここ数年はコロナ禍もあり、料理の宅配やテイクアウトをする人が増えたが、松原氏は自炊にこだわった。何を作るか考え、食材を買い出し、手を動かす──その全てが認知症予防に繋がるからだ。実際に料理中は脳が刺激されて血流が促進されるそうで、「料理は極めて高度な知的作業」だと松原氏は説いた。

【8】病院にはスーツで

『おもいッきりテレビ』時代の松原氏を知る日テレ関係者は、「いつもスーツでビシっと決めていた。お洒落には人一倍気を遣う人でした」と話す。

 松原氏は晩年も人に会う時は必ず前回とは服装を変え、病院に検査に行く際もスーツと決めていたそうだ。これも立派な認知症予防の一環だった。ファッションへのこだわりが脳を刺激するだけでなく、「着衣の乱れ」は認知症の予兆でもあるからだ。認知症患者はまず身だしなみに無関心になる傾向があるため、松原氏は日頃からファッションに気をつけていた。

【9】銭湯でゆったりと

 松原氏は無類の銭湯好きだった。「遠くの温泉より近くの銭湯」を合い言葉に、足繁く銭湯に通っていたという。広い湯船で全身を伸ばして血流を改善し、体を芯まで温める。これが認知症予防に効果抜群なのだという。

 一般的に平熱が36度を下回ると低体温とされ、高齢者には低体温の人が少なくない。原因は不明ながら、低体温が認知症リスクを高めることが分かっており、松原氏は入浴にはこだわった。

【10】テレビの音量を小さく

 聴力の維持にこだわる松原氏は、テレビの音量を最低限に絞っていた。

 2017年に英医学誌ランセットに掲載された論文によれば、45~65歳の中年期に難聴があると65歳以上の高齢期に認知症リスクが1.9倍に上がるという。また、耳の中で音を脳に伝える有毛細胞は、大音量に晒されると傷つき、二度と再生されない。松原氏はこうした加齢性難聴と認知症の因果関係を分析し、耳を守る重要性に辿り付いた。

 医師らしく徹底的に科学的データに基づきながら、誰でもできる習慣を実践していた松原氏。

「一生ボケない」をその身をもって証明した姿から学ぶべき点は多い。

※週刊ポスト2022年12月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン