世田谷保健所によれば「反応には個人差がありますが、最初は刺されてもかゆくない時期があり、その後は「夜も眠れないほどのかゆさ」を感じます。リンパ節の腫れや発熱を伴う場合もあります。あまりに刺されすぎると、最終的には何も感じなくなることもあります」とのことで、必ずしもすべての人が発熱を伴うほどの痒みに襲われるわけではないようだ。それでも刺されて平気というのは特殊な例で、大半のトコジラミ被害者は「二度と刺されたくない」と恐れ、人によってはホテル恐怖症、公共機関恐怖症のような状態になってしまう場合もある。
億ションの上層階にも発生したことが
本当にやっかいで恐ろしいトコジラミ、筆者の友人曰く「古い話だけど、レンタルビデオについてきた」とのことで、侵入経路は多種多彩、宿泊施設や公共機関もやっかいだが、自宅に侵入されたら本当に大変なことになる。
JPCAもまた、条件がそろえばトコジラミは至る所にいると話す。
「古くて薄暗い場所が多い建物にいがちだと思われていますが、長時間、人が滞在するところで条件がそろえば、トコジラミは至る所にいます。変わったところだと公園のベンチとか、図書館なんかも。ベンチに荷物を置いたらトコジラミが移ってきて、持ち帰ってしまったなんてこともあります。ですから、きれいに掃除されている新しい家にもトコジラミが発生することがあります。億ションの上層階にも発生したことがありました」(JPCA、茂手木氏)
駆除費用も先に触れたように高額となる。先の駆除業者が語る。
「自宅で刺された、また発見した場合はすぐに業者を呼んでください。施設の場合はすぐに離れて、できればその時身につけていた服やバッグ、靴下などは処分してください。卵が残っていれば、メスが1匹でも生き延びればトコジラミの害は繰り返されます。ただし悪質な駆除業者もいますから、ますは各都道府県、区市町村の保健所に相談してください」
とのことで、世田谷保健所も「一般のご家庭では駆除が難しく大きな問題となっています。駆除できないばかりか、トコジラミがその場を逃げ出すだけで、逆に居場所を広げてしまいます」と注意喚起している。JPCAも「もし同じ部屋で、複数回も刺されるようでしたら、それはトコジラミが繁殖してしまっている可能性が高いので、専門の駆除業者に相談してください」と、やはり専門駆除業者を呼ぶことを勧めている。
とにかく素人では駆除の難しいトコジラミ、決してお金や手間を惜しまずに対処して欲しい。ちなみにトコジラミ、季節関係なく冬でも部屋が暖かければ増える。
日本で再び増え始め、ついには耐性のついた「スーパートコジラミ」にまで進化したかつての「南京虫」、新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたいま、さらに猛威を奮う可能性は高い。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。