旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題以降、過酷な幼少期を送った「宗教2世」たちが被害を訴えているが、彼ら彼女らには心ない言葉が飛ぶことも珍しくない。なぜそれでも発信を続けられるのか。問題の中心に立つ小川さゆりさん(元旧統一教会2世)、夏野ななさん(元エホバの証人3世)に、ジャーナリストの鈴木エイト氏が思いを聞いた。【前後編の後編。前編から読む】
家族まで叩かれた
エイト:顔出しにはリスクも伴います。後悔したこともあるのでは?
小川:了承を得ているとはいえ、家族を巻き込んでしまっていることは重く考えています。私だけでなく夫にまで、批判的な意見や中傷がネット上に書かれてしまっている。動画で私の間違った情報を拡散され、『小川さゆりは嘘つき』『被害者ビジネスをしている』とも言われました。こうした誹謗中傷や間違った情報に現役の信者が賛同していることも、すごく残念です。
エイト:僕と小川さんの旦那さんが裏で通じていて、2人で共謀して小川さゆりを操っているとのデマも流されましたよね。
小川:私は自分の親を夫や夫の家族に紹介することができず、夫となかなか結婚できなくて苦労した。それなのに不妊治療をしていたことまで暴露され、批判のネタにされました。何年も悩んで苦しんだことをわずか数行で容赦なく攻撃され、ぐさりぐさりと心に言葉が突き刺さりました。
エイト:中には脱会した2世の女性を狙って、自分も宗教2世だと嘘をついてナンパ目的で近づく人がいます。同じ仲間と思って無防備に胸襟を開くことは危険で、「このアカウントには気をつけましょう」という警告が出回っています。
夏野:エホバの証人はムチを使うので、SMに興味があるマニアが寄ってきて、宗教2世と嘘をついてムチの詳細を聞き出そうとすることがあります。実際にムチで打たれた経験のある信者はムチについて聞かれると痛みや恐怖がフラッシュバックする。面白半分に聞かれることはセカンドレイプと同じなんです。
エイト:夏野さんは教団から攻撃されませんか?
夏野:エホバの証人は争いを禁じる教義もあるので、統一教会のように元信者を個人攻撃する嫌がらせはあまりありません。
ただしこれは難しい問題なのですが、元2世信者同士で背中を撃ち合うという問題がある。教義は信じるけど肉体的につらいから脱会したという元2世の方もいて、表に立っている私に「有名になりたいだけじゃないか」などとメッセージが来ます。