だんだんと薄着になる春、お腹まわりや腕の「ぷにっ」「ぶよっ」とした感覚に悲鳴を上げている人もいるだろう。だが、それは“むくみ”のせいかも──!? 気温差が激しいことで自律神経が乱れがちな春は、一年の中でも特にむくみやすい季節。改善するためにいま必要なのは、体から塩を出す「排塩」を促す食品を摂ることだ。
世界保健機関(WHO)のガイドラインによると、目標の塩分摂取量は1日5g未満と定められている。しかし日本人の塩分摂取量は平均10gと多い。世界基準の2倍もの塩分を摂っているのだ。
料理研究家で管理栄養士の牧野直子さんが指摘する。
「最近は減塩の調味料も増えて、健康のために塩分を気にする人が増えてきました。少しずつ日本人の塩分摂取量は減ってきているとはいえ、欧米先進国と比較しても多い。その原因はしょうゆやみそ、漬けものなど和食にあるといわれてきましたが、食生活が欧米化しても塩分摂取量はあまり変わっていません。外食や中食で加工食品を食べる機会が増えたためとも指摘されています」
塩分を摂りすぎることで、引き起こされるのがむくみ。みやま市工藤内科院長で内科医の工藤孝文さんが解説する。
「人間の体は、水分と塩分(ナトリウム)が一定の濃度で保たれています。塩分を摂りすぎてしまうと体はその濃度を下げるため、水分を体内にため込み、むくんでしまうのです。
体重が増えた、ダイエットしているのにやせない、という人は実は塩分摂取量が多いせいで、体に水がたまっている可能性もあります」
体のむくみはやがて大きな病気につながることもある。工藤さんは、水をたくさん飲んで体内にため込むことで、血液量が増えて血管にかかる圧力が高くなると説明する。
「この高血圧の状態を放置することで動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などを引き起こす原因となるのです」(工藤さん)
塩分過剰摂取のリスクはそれだけではない。
「塩分摂取量が多いと胃がんの罹患リスクが高まるといわれています。事実、日本は欧米に比べて胃がん患者が多いのです」(牧野さん)
体内の塩分を減らすためには、塩分の摂取量を減らす必要があるが、ただ塩分の摂取量を減らすのではなく、体内にたまった塩分を出すことの方が注目されている。
「摂りすぎた塩分を体外に排出、つまり『排塩』することで体内の塩分濃度を抑制することができます。その方法の1つが、カリウムをしっかり摂ることです。
カリウムには体内で不要になったナトリウムや水分を尿として排泄する働きがあります。18才以上の日本人女性の場合、生活習慣病の予防のために1日あたり2700~2900㎎摂ることが目標とされています」(工藤さん)