これらのほかにヤセ菌として有名なものは、トップクラスのアスリートの腸に多いとされる「アッカーマンシア・ムシニフィラ菌」や「クリステンセネラ・ミヌタ菌」などが挙げられる。
「いずれも、脂肪と糖の代謝を上げる短鎖脂肪酸をたくさんつくるのが特徴です。中でもアッカーマンシア菌は一般的な日本人の腸には少なく、欧米人の腸に多い。高脂質の食事が多くてもやせている人は、アッカーマンシア菌が多い傾向にあります」(川本さん・以下同)
一方で、一般的な日本人に多いヤセ菌は、バクテロイデス門バクテロイデス属の菌だ。
「この菌は、食物繊維など炭水化物を分解して短鎖脂肪酸をつくり、脂肪細胞が大きくなるのを防ぎます。また、脂肪や糖質の代謝を上げる作用もある。結果として、スリムな体をつくるだけでなく、生活習慣病予防にも役立つとされています」
近年、日本人の腸に特に多いことが判明した「ブラウティア菌」も、ヤセ菌の一種だ。
「ブラウティア菌は、脂肪の代謝を促進し、腸の炎症を抑えるオルニチンやSアデノシルメチオニン、アセチルコリンなどをつくります。また、食物繊維と同じ働きをするアミロペクチンを生成することもできるため、善玉菌を増やして腸内フローラの状態を整え、太りにくい体に導いてくれるのです」(國澤さん・以下同)
ブラウティア菌は、デブ菌が多いとされるファーミキューテス門に属する「例外」のヤセ菌。大麦や麹に含まれるグルコシルセラミドによって増えることがわかっており、古くからの日本人の食生活が、ブラウティア菌を育てたのではないかと考えられている。
「ブラウティア菌は、日本から遠く離れたスウェーデン人の腸にも多いことがわかっています。人種も文化も異なりますが、食事から摂れる栄養成分が似ているのかもしれません」
川本さんによれば、ブラウティア菌は、海藻類をよく食べる人の腸内に多いという。
「よく“生のりを分解・消化できる民族は日本人だけ”といわれているのも、このブラウティア菌の働きによるのかもしれません」(川本さん)
腸内でひしめき合う「デブ菌」と「ヤセ菌」の特徴を知り、いかに前者を減らして鎮圧し、後者を増やして活性化させるか──。これこそが、ダイエットのカギを握っていると言っても過言ではないのだ。