たとえば、5月14日に放送される『歌のシン・トップテン』(日本テレビ)は、「80年代の恋愛ソングを10代・20代が選び直して“シン・トップテン”を作り、令和世代のアーティストがカバーする」というコンセプトの特番。「“歌バラエティ”は若年層にテレビを見てもらうチャンスのある番組ジャンル」という意識があるのです。
世代をフィーチャーできる歌の強み
もう1つ追い風となったのは、2020年春に行われた視聴率調査のリニューアル。「どの年齢層が何人見ているか」などがわかりやすくなったことで、各局はスポンサーの多くが求めるコア層(13~49歳)に向けた番組制作を進めるようになりました。
そのコア層の中でも重視されているのがファミリー層。「ゴールデンタイムはファミリー層を狙えるバラエティを放送していこう」と考えたとき、現時点で最も安定した視聴率を計算できるのが歌バラエティなのです。
実際、前述した「サビだけカラオケ」「ハモリ我慢ゲーム」「ハマダ歌謡祭」や、『クイズ!ドレミファドン』『ハモネプリーグ』などは、親と子の両方が楽しめるように昭和・平成・令和の楽曲をミックスする形で構成されています。
また、今年放送された特番を見ても一目瞭然。『昭和vs令和!世代を超えて愛される最強ヒット曲50連発』(テレビ東京系)、『これが定番!世代別ベストソング ミュージックジェネレーション』(フジテレビ系)、『名曲!ジェネチェンFES』(フジテレビ)などの世代をフィーチャーしたコンセプトの歌バラエティが目立ちました。
“視聴率対策”という意味では、「男女アイドルグループのメンバー、声優、モデル、インフルエンサーなどを大量出演させやすい」のも制作におけるメリットの1つ。これらの出演者は「知名度はそれほど高くないが、熱心なファンがいるため、リアルタイム視聴につながりやすい」「そういう人をたくさん集めることで、ある程度の視聴率が見込める」という狙いが成立するのです。
ここまであげた以外でも、「楽曲の『新しい』『古い』という概念が薄れて扱える曲数が多い」「名曲や流行っている歌はリピートして何回でも聴くという習慣が浸透した」「歌バラエティは出演者が集めやすく、制作費も抑えられる」などのメリットがあります。各局のテレビマンと話していると、「歌バラエティはすでに飽和状態に近いところまで来ていることはわかっているけど、それでもメリットは多いし、まだまだ見てもらえる」という段階のようなのです。
フジ日曜ゴールデンと歌バラの歴史
最後に話を14日に放送される『オールスター合唱バトル』に戻すと、100名の出演者は、Z世代、80年代アイドル、芸人、アスリート、演歌歌手と、まさにファミリー層狙いのバランスであり、「家族そろって見てもらおう」という意図は明確。ただ実は今から約40~50年前に、家族そろって見てもらうタイプの歌バラエティがフジテレビ日曜ゴールデンタイムで放送されていました。