国際情報

【タイタンの悲劇】米潜水艇事故の背景に深海ツアービジネスの過熱 求められる世界基準のルール作り

潜水艇「タイタン」の事故は防げなかったのか(ABACAPress/時事)

潜水艇「タイタン」の事故は防げなかったのか(AbacaPress/時事)

 暗闇に閉ざされた深海3800mで何があったのか──潜水艇「タイタン」の事故はいまだ不明な点が多い。専門家に取材すると、“その時”船体と乗組員を襲った光景は、想像を絶するものだったようだ。

 大西洋に沈むタイタニック号の見学ツアー中に潜水艇「タイタン」が消息を絶った事故で、米沿岸警備隊は6月25日、船体と乗組員の捜索を終了すると発表した。

 乗船していた5人は全員死亡と発表され、遺体の回収も断念。最悪の結果となった。

 米軍の探知システムには、潜水を開始した6月18日時点でタイタンの「破裂音」が捉えられていたという。船体の破片が発見されたのは深海3800mの海底で、タイタニック号の船首から約490m離れた場所だった。

 潜水艇に何が起きたのか。長岡技術科学大学教授で水難学会理事の斎藤秀俊氏はこう語る。

「原因は推測するしかないですが、深海の水圧によって引き起こされた事故だと考えられます。観測窓の継ぎ目のネジが外れる、もしくは隙間が生じるといったトラブルがあり、緊急浮上しようとして水圧に急激な変化が起きたのか、最初から船体に小さな亀裂が入っていたのか。いずれにせよ水圧で船体が壊滅したのでしょう。

 爆発的な力で圧縮され、破壊されたことから“爆縮”と報じたメディアもありますが、圧力による破壊なので“圧壊”という言葉が適切です」

 水圧は10m深くなるごとに1気圧ずつ高くなるため、水深3800mでは約380気圧。1cm四方に380キロの重さがかかるというから想像を絶する圧力だ。

「圧壊する前段階では、船体はピキピキと悲鳴を上げていたことでしょう。専門家はこれを“金属の叫び声”と呼びます」(斎藤氏)

 水圧によって潜水艇は一瞬で潰され、この際に起きる「断熱圧縮」と呼ばれる働きで船内は6000~8000℃近くまで上昇したとの見方もある。乗組員は自身の死に気付いてすらいなかったのかもしれない。

 この悲惨な海難事故に被害者の友人は「彼らが苦しまなかったのであれば、せめてもの救いだ」とメディアにコメントを残した。

関連記事

トピックス

優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
素材はピカイチとされたが…
【オコエ瑠偉が巨人を電撃退団】「阿部監督一強体制」で反発は許されなかったか メジャー移籍は厳しい現実、“ランクを下げながら海外移籍を模索”のシナリオも
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン