「オウム」と「9.11」
いわゆる「公安警察」と呼ばれる警察庁警備局にも、中国やロシアのスパイを監視する役割がある。
「同局は、情報機関として国内を担当する公安課と、海外を担当する外事情報部(外事課・国際テロリズム対策課)があります。公安警察は戦後作られた組織で、国内の共産党員など左翼を監視対象とし、外事情報部は国内にいる中国やロシアなどの外国人スパイを監視しています。必要があれば、海外に逃亡中の日本赤軍の活動家などを追うこともあります」(同前)
赤軍派によるテルアビブ乱射事件(1972年)、ドバイ日航機ハイジャック事件(1973年)などでは、現地情報収集のため、キャリアの警察官僚が派遣されたという。
警察庁警備局は各都道府県警察の警備部とも連携し、情報活動を進める。『VIVANT』で阿部寛(59)が演じた野崎守が属する警視庁公安部もそのうちの一つだ。ある県警本部の公安警察官が言う。
「公安の仕事はオウム事件でガラリと変わり、その後、9.11(アメリカ同時多発テロ事件、2001年)でまた変わりました。旧来の左翼組織に加え、宗教団体も警戒対象になり、海外の過激派組織も監視対象になった。県警のなかには管轄内の宗教施設などに出入りして監視しているところもあるようです」
一方、外務省の国際情報統括官組織(国情)の役割は、「各国の地域局が収集した情報を分析し、政策を担当する部署に渡す」(小谷氏)ことだという。
「外務省の外交政策に資する情報分析が役割で、たとえば、福島原発の処理水放出において日本は中国に対してどう対応すべきかという政策を立てるときに、国情が中国国内で拡散する情報などを調べ、提言するわけです」(同前)