ネタニヤフ・イスラエル首相の判断にも注目が集まっている(写真/AFP=時事)

ネタニヤフ・イスラエル首相の判断にも注目が集まっている(写真/AFP=時事)

 イスラエルにすれば、ハマスの戦闘員も、それをサポートする非戦闘員も、ユダヤ人だから殺してしまえというシステムに関わっていれば一緒ということになる。

 もちろん、ガザは広義ではイスラエルの内部なので、パレスチナの一般の人々は保護しなければならない。だから、イスラエル軍はガザ地区で一軒一軒しらみつぶしにハマスとその協力者を掃討していく地上作戦をせざるを得ない。これには数か月かかるだろうが、所詮、ハマスは民兵組織なのでイスラエルの勝利は揺るがない。

 世界にとって危険なのはむしろガザとは逆のイスラエル北部、レバノンとの国境の情勢だ。ガザの戦闘を好機と見たシーア派のイスラム武装組織「ヒズボラ」とイスラエル軍との紛争が大きくなりつつある。

インド・パキスタンでも

 ヒズボラはイランのイスラム革命防衛隊の支援を受け、ハマスの10倍以上の戦力がある。本格的に侵攻してきたら、イスラエルは国防軍の6?7割を北部に送らなければならない。二正面作戦となると、ガザでの地上作戦も滞る可能性がある。

 米国のバイデン大統領が2つの空母打撃群を派遣したのは、この北部の情勢を心配してのことだ。

 ヒズボラが侵攻してきたら、米軍は間違いなく空母から空爆をかけるはず。しかし、空爆だけではヒズボラの陸上部隊を殲滅することは難しい。

 だからといって、米国は地上戦には踏み込めない。米国の世論を考えると、自国の若者の命を他国の戦争で失うことは支持を得られないからだ。

 そうなると、イスラエルは独力で侵攻を防がなければならなくなるが、正規軍は約10万人。予備役を総動員しても45万人程度で、国境を越えてレバノンで戦う余力はない。

 そこで何が起きるか。

 核兵器の使用だ。

 イスラエルは核保有国だが、ユダヤ人とハマス、ハマス以外のパレスチナ人が混在するガザに対しては、核は使えない。

 一方、レバノン南部はユダヤ人がいないし、ヒズボラを中心とする勢力だけで人口も少ない。風も西から東に向かって吹くから、レバノンに核を使っても死の灰はイスラエルには流れてこない。核使用のハードルは高くないわけだ。

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