ヒズボラの侵攻を跳ね返せないと判断した時、イスラエルは合理的な判断として核に頼らざるを得なくなる可能性がある。
ひとたび核兵器が使用されたら、世界の秩序が変わる。核兵器を使うハードルが非常に低くなる。インドとパキスタンという核保有国同士が紛争を続けるカシミールなどの地域でもリスクは高まる。
アラブ諸国も、核兵器を持たなければ自国を守れないと捉えれば、競ってパキスタンから核を買うだろう。中東の10数か国が核武装する状況では、それこそ偶発核戦争の危険が非常に高くなる。
インテリジェンス情報分析は常に最悪の事態を想定するのが原則。イスラエルとパレスチナの状況は、世界的な核危機につながっていると考えておくべきだろう。
【プロフィール】
佐藤優(さとう・まさる)/1960年生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在モスクワ日本大使館勤務等を経て、国際情報局分析第一課主任分析官。2002年、背任と偽計業務妨害で逮捕。2005年に執行猶予付きで有罪判決。『国家の罠』『自壊する帝国』など著書多数。
※週刊ポスト2023年11月10日号