余分なシーンから立ち上がるフェイクドキュメンタリー的な味わい
撮影スタッフは映画畑がほとんどだったため、最初はフェイクドキュメンタリー独特の撮影手法に戸惑いもあったという。
「映画のスタッフって、何かしら細かく準備をしたがるんですよ。『ここはどっちが映りますか?』みたいに。『いや、360度映る可能性あるよ』って(笑)。最初の1週間くらいはなかなか理解してもらえなかったんだけど、断片的に編集したのを見せたら、そこからスムーズになりました。
劇映画を撮るときは、極論モニターに映っている映像だけ見て、いいか悪いか判断すればいい。でもフェイクドキュメンタリーを撮るときってそうじゃない。モニターだけを見ていても成立しない。ここで会話しているけど、こっちでなにか起こりそうだなとか、360度アンテナを張っていないといけない。五感で作るのがフェイクドキュメンタリーな感じがしますね」(山下)
ロケバラエティのように撮りつつもバラエティのように見えないのは、編集の力が大きいという。編集を担ったのは松江からの信頼のあつい今井大介だ。
「フェイクドキュメンタリーって実は編集がいちばん大事なんですよ。編集マンは現場にはいないので客観的視点で素材を見て繋げていくんですけど、現場では単なるつなぎのシーンだと思っていたのが、編集で光り輝くときがあるんですよね。
バラエティになれた編集マンの場合、フリを作ってオチのある編集をしますが、その中で余分なシーンはカットされることもあるんですよね。でも山田孝之がただアイスを食べている様子とか、自転車を立ち漕ぎしている様子みたいな一見余分なシーンにこそ、フェイクドキュメンタリー的な味わいがある。だから今井さんみたいなバラエティ畑ではない方が編集したほうがフェイクドキュメンタリーとして面白くなりますね」(竹村)