JR新宿駅に東西自由通路が完成したのは2020年7月のこと。それまで、東口から西口、西口から東口へと移動するには、甲州街道まで出てぐるっと大回りするか、1927年に完成した天井が低い角筈ガードまたは地下街へ潜ってメトロプロムナードを利用するしかなかったが、東西自由通路ができたことで格段に便が良くなった。駅によって行き来がしづらくなる不具合が、北陸新幹線延伸で沸く福井県・敦賀駅で生じている。ライターの小川裕夫氏が、敦賀駅で現地を歩き、自由通路が設置されなかったことで起きていることをレポートする。
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2024年3月16日、北陸新幹線が石川県の金沢駅から福井県の敦賀駅まで延伸開業した。
久々の延伸開業という話題性や、福井県は今回の開業でようやく新幹線が走り始めるということもあって終着駅となる敦賀駅は大いに注目が集まっている。
福井県を含む北陸地方は歴史的にも大阪・京都、名古屋などの関西・東海地方との結びつきが強く、鉄路はこれまで大阪からは特急「サンダーバード」、名古屋からは特急「しらさぎ」が運行されて北陸と関西・東海を結んできた。
しかし、2015年に北陸新幹線が金沢駅まで延伸するとサンダーバードやしらさぎの運行区間は短縮。今回の北陸新幹線の延伸開業で、再びサンダーバードとしらさぎの運行区間が敦賀駅まで短縮された。
東京方面から北陸地方へと交通利便性は飛躍的に向上した一方で、経済・産業・観光といった部分で結びつきの強かった関西・東海地方との往来は不便になる。北陸新幹線フィーバーで活況を呈している間は、そうしたマイナス要因は気にならないかもしれない。
しかし、落ち着きを取り戻す頃に、それらの影響は少しずつ表面化していくことが予想される。
なによりも、今回の延伸開業によるフィーバーでかき消されているが、北陸新幹線のメリットを最大限に享受していると思われている敦賀市でも北陸新幹線開業に関連する問題をいくつか抱えている。そのひとつが、敦賀駅における北陸新幹線と在来線との乗り継ぎ問題だ。
遠い在来線と新幹線のホーム
北陸新幹線の開業と同時に北陸本線の敦賀駅―大聖寺駅間は第3セクターのハピラインふくいへと移管された。北陸本線とハピラインふくいは、敦賀駅付近で地上線を走っている。他方、北陸新幹線の敦賀駅は高架線という構造になっている。そのため、1階にある在来線ホームから2階乗換改札を通過して3階にある新幹線ホームへ、逆もまた同じように延々と移動しなければならない。