150周年記念事業で9月に期間限定で公開が予定されている東の間。壁画は洋画家の和田英作の手によるもので、和田は東京駅の貴賓室の壁画や帝国劇場の天井画なども描いた

150周年記念事業で9月に期間限定で公開が予定されている東の間。壁画は洋画家の和田英作の手によるもので、和田は東京駅の貴賓室の壁画や帝国劇場の天井画なども描いた

 本館は明治期に造られた古い建物だったが、政府が威信をかけていただけあって躯体は堅牢だった。昭和の大改修では最新の空調を導入するために壁に穴を開ける必要が生じたが、特殊な工具を使用しなければ壁に穴を開けられなかった。

「迎賓館は大地震にも耐えられるよう、構造材にも多くの鉄を使用しています。現在では建物に鉄を使うことは当たり前ですが、明治期は鉄が貴重でした。そのため、海外から大量の鉄材を輸入して賄いました」と説明するのは、内閣府迎賓館総務課の担当者だ。

 明治政府は建材の調達を入念に計画していたこともあって、迎賓館を建設するのに必要な鉄材は輸入したものでも十分に足りていた。しかし、

「建材の有効活用という観点から、不要になった線路のレールを譲り受け迎賓館の構造材として使用しました。構造材で使用しているのでレールは建物内部にあり、直に目で見ることはできません」(同)

 迎賓館が誕生した時、日本の鉄道は新橋(現・後の汐留)駅―横浜(現・桜木町)駅間の開業から37年が経ち、1884年には上野駅―高崎駅間が開業、1889年には東海道線が新橋駅―神戸駅間が全通していた。

 レールは列車が通過するたびに摩耗する。そのため、定期的に交換しなければならない。その中古レールを有効的に再利用することは、鉄道黎明期から現在に至るまで取り組まれている。例えば、東京では上野駅や田端駅、水道橋駅などの駅ホーム上屋に役目を終えたレールが用いられている。

 迎賓館にも同様の発想でレールが大量に使用され、昭和の大改修時にその一部が交換されたのだろう。神奈川県平塚市に所在する宝善院には、改修工事の際に交換された鉄道開業時のレールが安置されている。改修後の迎賓館内部には、まだレールが残っていると思われるが、それを解明するチャンスは迎賓館の再改修を待つしかない。

鉄道と美術の歴史

 昨今、鉄道は単なる移動手段となり、駅舎や車両などには経済性や機能性を優先する風潮が強くなっている。そのため、駅舎や車両がデザイン性に言及されることは少ない。

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん、母・佳代さんのエッセイ本を絶賛「お母さんと同じように本を出したい」と自身の作家デビューに意欲を燃やす 
女性セブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
国民民主党の平岩征樹衆院議員の不倫が発覚。玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”に(左・HPより、右・時事通信フォト)
【偽名不倫騒動】下半身スキャンダル相次ぐ国民民主党「フランクで好感を持たれている」新人議員の不倫 即座に玉木代表よりも重い“無期限の党員資格停止”になった理由は
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
永野芽郁、4年前にインスタ投稿していた「田中圭からもらった黄色い花」の写真…関係者が肝を冷やしていた「近すぎる関係」
NEWSポストセブン
東京高等裁判所
「死刑判決前は食事が喉を通らず」「暴力団員の裁判は誠に恐い」 “冷静沈着”な裁判官の“リアルすぎるお悩み”を告白《知られざる法廷の裏側》
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《インスタで娘の誕生報告》大谷翔平、過熱するメディアの取材攻勢に待ったをかけるセルフプロデュース力 心理士が指摘する「画像優位性効果」と「3Bの法則」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《永野芽郁、田中圭とテキーラの夜》「隣に座って親しげに耳打ち」目撃されていた都内バーでの「仲間飲み」、懸念されていた「近すぎる距離感」
NEWSポストセブン
18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん
「女性のムダ毛処理って必要ですか?」18年間ワキ毛を生やし続けるグラドル・しーちゃん(40)が語った“剃らない選択”のきっかけ
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《田中圭に永野芽郁との不倫報道》元タレント妻は失望…“自宅に他の女性を連れ込まれる”衝撃「もっとモテたい、遊びたい」と語った結婚エピソード
NEWSポストセブン
上白石萌歌は『パリピ孔明 THE MOVIE』に出演する
【インタビュー】上白石萌歌が25歳を迎えて気づいたこと「人見知りをやめてみる。そのほうが面白い」「自責しすぎは禁物」
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《お泊まり報道の現場》永野芽郁が共演男性2人を招いた「4億円マンション」と田中圭とキム・ムジョン「来訪時にいた母親」との時間
NEWSポストセブン