また、レモン果汁が含んでいるクエン酸は強力な成分であるゆえ、大量に摂取すると腸内細菌を死滅させ、腸内環境が悪化する要因になります」
最新の知見は「時代遅れの健康食」をあぶり出す一方で、かつては摂りすぎれば不健康になるとされていた食品の中に、誤解されているものがあったことも明らかにしている。
「例えば動物性の脂質が植物性よりも健康に悪いというのは過去の話。肉に多い飽和脂肪酸の摂取量と、血管系疾患の発症は無関係だというデータがあります。むしろ最近問題視されているのは、植物油の主成分であるリノール酸です。具体的にはごま油、大豆油などは少量に控えた方がいい」(江部さん)
とりわけ、現代人のたんぱく質の摂取量は戦後の1950年代と同じ水準まで低下している。筋力を維持して健康寿命を延ばすためにも、動物性たんぱく質をしっかり摂ることを意識したい。
色が薄くて旬のものを選ぶべし
めまぐるしく変わる「健康食」を取り巻く状況を前に、私たちはどんな基準で食べるものを選ぶべきなのか。管理栄養士の麻生れいみさんは「旬」をキーワードに挙げる。
「農作物の栄養価は、収穫時期によっても大きく変化します。例えば、ほうれん草の旬は冬ですが、100gあたりのビタミンCを比較すると、『冬採り』で60mg、『夏採り』で20mgと3倍もの差があります」
女子栄養大学の調査によれば、トマトのビタミンA量も旬の夏と冬で約2倍違うというデータもある。
久保さんは、葉物野菜は色が見分ける基準の1つになると話す。
「なるべく色が薄いものを選ぶと、安全で栄養価が高い。ほうれん草は緑が濃いほど人気ですが、実は硝酸イオンが多いほどに色が濃くなります。また、元気でみずみずしい野菜ほど栄養価は高い。葉物野菜に限らず、葉っぱはできるだけ大きい方がいいし、触ったときに硬めの方がいい」
栄養価の高い食品を手に入れたら、食べ方にも気を配りたい。
「栄養を余すことなく食べるためには、食品の特性を知ることです。例えば水溶性のビタミンCやB群が多く含まれている野菜はスープにするといい。脂溶性のビタミンAやEは油に溶けやすい性質があるので、油炒めがおすすめです」(麻生さん)
毎日食べるものだからこそ、小さな積み重ねが大事になる。情報を精査し、正しく栄養を摂ろう。
※女性セブン2024年5月9・16日号