【著者インタビュー】三浦しをんさん/『しんがりで寝ています』/集英社/1760円
【本の内容】
2019年から2023年にかけて女性誌に連載されたものを中心に、書き下ろしなどを加えた≪なんてことのない日常≫を綴ったエッセイ集。40代半ばを過ぎた三浦さんのエッセイに増えてきたのが「老い」のこと。
《いいかげんさには定評があるといえど、予定がすっぽり頭から抜け落ちたことは、いままで皆無だったのだが……(たぶん。抜け落ちた経験自体を忘れてる可能性もある)》(「受難のトートバッグ」より)。
何度も声を上げて笑うこと請け合い。公共の場で読もうと思っているかたはご注意を。本書の前日譚となる『のっけから失礼します』もある。が、三浦さん曰く≪とにかく、第二弾の本書をいきなり読んでも話は通じるので、なにも心配はいらない≫(本書「まえがき」)とのこと。
ここで笑ってもらおう、みたいなことは考えてない
女性誌『BAILA』で連載中のエッセイをまとめた三浦さんの『しんがりで寝ています』を読むと、笑いが止まらなくなる。新元号をめぐってタクシー運転手とのあいだで突然「緊急会議」が開催されたり、武術の達人に凝りをほぐしてもらったら「肉質はいい」とまさかの褒め方をされたり、ふつうに暮らしているのになんでこんなことが?という驚きにあふれている。
もしかして、確実に読者を仕留める笑いのテクニック、みたいなものが三浦さんにはそなわっているのだろうか。
「いやいやいや。そんなテクニックがあるなら知りたいです。ここで笑ってもらおう、みたいなことは考えてないですね。面白いことがあると、友だちに言うじゃないですか。電話やLINEで『ねえねえ、こういうことがあって』と説明して、友だちがどのポイントで面白がってくれたかは意識してるかもしれません。ここがおかしいんだなと思うと、そこに行き着くように書く、みたいなことはありますね」
日記はつけず、気になった言葉をほんの数文字、メモしておくぐらいで、締切になると、そういえば何かあったかなと記憶を引っ張り出してくる。
エッセイというのは結局、自慢だと定義したエッセイストがいるが、自慢からもっとも遠いところに三浦さんのエッセイはあるような気がする。