名作揃いの韓流ドラマの歴史に、新たな1作が加わった。ブームは日韓を超え、世界に広がりつつある。まだ見ていない人は「すぐに」、もう見た人は「もう1度」見たくなる話題作の見どころを、余すところなくレポート。
最終話で記録した韓国での視聴率24.9%は、現地放送局(tvN)の歴代最高記録で、あの『愛の不時着』(2019年)を超えた──。空前のブームとなっているのが、4月28日に大団円を迎えた韓流ドラマ『涙の女王』だ。
「初回視聴率は5.9%と苦しいスタートでしたが、回を追うごとに視聴率を伸ばし、12話目に20%超え。韓国でも日本でも社会現象となった『愛の不時着』の21.7%を、16話目の最終話で一気に抜き去りました。第3位は超名作の『トッケビ』(2016年)ということからも、そのすごさが伝わります」(韓国在住のエンタメライター・田名部知子さん)
韓流文化や韓国ドラマに詳しい作家・康熙奉さんが続ける。
「平均して1話が約1時間半、最終話は2時間近くもあります。それでも中だるみさせずに、毎話ラストに驚きの展開を組み込むことで視聴者の心を離さなかったことが、視聴率の右肩上がりにつながったのでしょう」
韓国の調査会社「ギャラップ」によると、「韓国人がいちばん好きな番組」ランキングで3月、4月とも1位にランクイン。ドラマの関連動画の累計再生回数は15億回を突破した。配信を行うNetflixのグローバルランキングでも常に上位入りし、日本はもちろん世界中の視聴者が物語の行方を見守ってきた。ファンの中には、「この楽しみが終わってしまうのが嫌で、どうしても最終回が見られない」とまで言う人もいるほどだった。
韓国ドラマの王道
格差婚カップルのロマンチックコメディーは、大財閥百貨店グループの令嬢・ヘインと、田舎のスーパーマーケットを経営する一家に生まれたヒョヌが大恋愛の末に結婚したところから幕を開ける。しかし、結婚3年目ですでにふたりの夫婦関係は崩壊寸前。ところが、思いもよらない危機に直面したことで冷え切った関係が再び動き始め、お互いが本当の愛に気づく、というストーリーだ。
「シリアスかつラブコメの要素があり、加えて韓国ドラマ特有の病気や余命宣告、記憶喪失、復讐といったキーワードのオンパレードです。韓国ドラマにあまり馴染みのないかたにはその“王道ぶり”を楽しめる一方、ドイツ・ベルリンでの大々的なロケを敢行するなど潤沢な資金を投入して壮大なスケールで描かれていることが、目の肥えたファンをも引きつけたのでしょう」(前出・康さん)
最終話後の5月4・5日に韓国で放送されたスペシャル番組も大きな話題を呼んだ。『涙の女王』は、なぜここまで多くの“中毒者”を生んだのか。