──千尋が思わずハクっていう人は2人いるのかと尋ねるシーンがありますけど、誰かがいる前での千尋への接し方と、2人きりのときの接し方の違いは明確に伝わってきました。
ぼくは、ハクが千尋に厳しく接するところも愛だと思っているので。厳しくすることでこの世界での生き方を教えてあげないという思いで演じているので、それが伝わるといいなと思っています。それは現実社会でもあり得ることなんじゃないかなと思います。
──では次の質問です。「観劇した際、ハクが不思議な雰囲気をまとっていたのが印象的でした! 本来はヒトでない存在を演じるにあたって、気をつけたことや難しかったことがあれば知りたいです!」。
ハクとしての所作にはこだわっていて、研究をしました。初演からハクを演じているコタくん(醍醐虎汰朗)と(三浦)宏規くんも、所作はこだわったと言っていましたね。舞台ならではだと思うんですけど、ハクは人間とかけ離れている存在なので、歩くときにいっさい足音を立てないように意識をしていたり、腕も人が普通に動かすような使い方はしないようにしています。
──そういえば細かい動きのところで言うと、手に関する質問が来ていました。「立っているとき、手を握ったままなのが印象に残っています。その辺は何か意識してのことなのでしょうか?」という質問ですが、ずっと握っているわけではないですよね?
そうですね。ただ、千尋と最後にお別れをするシーンでは、ぼくは二度と会えないという気持ちで演じているので、千尋に「振り向かないで」と言った後に、手をぎゅっと握る仕草はしています。
──では次の質問です。「帝劇の初日から何回か観劇し、ハクの立ち振る舞いや声が微妙に変化しているように感じます。実際に目標の1つと話していた帝劇という舞台に初めて立ち、『千と千尋の神隠し』のハク役を演じてみて、立つ前と何か心境に変化がありましたか?」。
最初はちょっと“帝劇”という劇場に怖さがあったんです。伝統があるので、圧迫感を感じるような気がして……。でも、実際に立ってみたら演じやすいなと思いました。すごく世界観に入り込みやすい劇場だなという実感が沸いてきて、すごく楽しかった!イメージがガラリと変わりました。
──ちょうど建て替え前のタイミングで初めて帝国劇場に立てたことも、貴重な経験になったのでは?
本当に光栄だな……と思っています!
(PART3へ続く)
◇舞台『千と千尋の神隠し』公演情報
東京・帝国劇場で幕を開け、愛知・御園座公演を経て、現在は福岡・博多座で公演中(5月19日まで)。大阪・梅田芸術劇場メインホール、北海道・札幌文化芸術劇場hitaruへと公演が続く。また、日本での上演と並行して、演劇の聖地イギリス・ロンドンコロシアム劇場でも4月30日から8月24日までロングラン公演を実施。
撮影/黒石あみ