主演映画『碁盤斬り』で15年ぶりの時代劇に挑戦した草なぎ剛(49才)。自身の代表作になったと胸を張る本作は、公開を前にイタリアで開催された「第26回ウディネ・ファーイースト映画祭」で、批評家により選出される「ブラック・ドラゴン賞」を受賞し、早くも世界で話題に。放送作家でコラムニストの山田美保子さんがその撮影秘話を直撃。草なぎが語る。
不器用で頑固一徹な格之進にイライラした
撮影は1年と3か月くらい前だったかな? その直後にNHK連続テレビ小説『ブギウギ』に入ったと思います。花粉が飛びまくっていた時期に撮っていた記憶がよみがえりますね。
先に『碁盤斬り』で武士の誇りを賭けた復讐に挑む頑ななキャラクターを演じていたから、『ブギウギ』での羽鳥(善一)さんは、あんなふうにフワッとした雰囲気を醸し出す人に仕上がったのかもしれない。音楽が大好きで、どんなときも前向きで、明るく進んでいく羽鳥さんと、囲碁だけを武器にリベンジしていく浪人……。1年を通じて、まったく異なる正反対な役がやれたのはすごくおもしろかったね。
今回、映画でぼくが演じた柳田格之進は不器用で頑固一徹。彼の最後まで清く生きようとする心がけみたいなものはいまの時代には考えられないし、到底追いつけなかったり、掴んだりすることもできないレベルなんで、最初は「どうして?」と思ったし、途中でもイライラさせられっぱなしでした。
でも演じていて悪くはなかったですね。ほとんど順撮りをしていたこともあって、最後は清々しい気持ちにさえなりました。
ぼくが演じる復讐を描いた作品というと、ドラマの『〜戦争』シリーズ(カンテレ・フジテレビ系)と重ねるかたは多いかもしれませんが、今回の役は武士なのでイメージはずいぶん違います。
でもぼく、こんなに笠がなじむヤツはほかにいないっていうぐらいすごく似合ってて(笑い)。もしも江戸時代に生まれていたら、もっと人気が出たんじゃないかな?と思うぐらいで……。令和の時代でも笠をかぶって歩こうかなというほど気に入ってますよ。日傘男子ならぬ笠男子!(笑い)
それにぼくはヴィンテージのデニムとかギターとか古いものが好きだから、頭の中で古い人の役を演じられるんだと、おまじないのように信じるようにしていました。“保険”をかけていたというワケじゃないんだけれど、演じていて少し不安になったとき、そういうことを考えましたね。撮影が行われた京都にも必ず古いものを持参して途中で握りしめたり、においを嗅いで気持ちを安心させていました。世界観は違うんだけれど、気持ち的にそれでずいぶん助けられていたかな?