“強権執行部”への不信感
電撃退職には様々な計算があったようだが、発表後は思わぬ動きもある。前出の中堅親方が言う。
「若手親方たちから、今回の退職を歓迎する声が出ている。彼らは、現執行部の“歯向かう勢力を徹底的に潰す”という姿勢をよく思っていない。厳罰になった宮城野親方と、弟子の大の里の飲酒問題で軽い処分に終わった二所ノ関親方の扱いが違い過ぎることへの不信感も募っている。尾車親方は、佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)を通じて一門、協会に影響力を持ち続けるつもりだろうが、反発も出ている。それゆえ“白鵬包囲網”が弱まるとの見方も出ている」
今春の人事では不祥事の多さを八角理事長に意見した芝田山親方(元横綱・大乃国)が、“閑職”の相撲教習所所長へ左遷されたが、「この処遇も納得しない声が多い。そうした執行部への反発が結果として宮城野親方の復帰時期に影響する可能性はある」(同前)という。
宮城野親方は、伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)の忠告を受けて弟子たちの実家へ挨拶に回り、部屋でも稽古まわし姿で汗をかいている。相撲ジャーナリストが言う。
「どこまで稽古まわし姿で我慢できるかが当面のカギ。伊勢ヶ濱親方は来年7月で定年だが、宮城野部屋の復活は早くても再来年1月場所後の理事選後でしょう。
ただ、そうして伊勢ヶ濱部屋付きの親方として指導するなかで、強い力士がどんどん出る可能性もある。そうなると、執行部の思惑とは逆に宮城野親方の評価が高まることも考えられるのです」
伊勢ヶ濱部屋には尊富士や熱海富士ら有望株が所属し、尾車親方の影響力が残る二所ノ関一門の琴櫻や大の里と昇進争いを繰り広げる。土俵内外で、ぶつかり合いが続く。
※週刊ポスト2024年5月31日号