10年間、夫婦で読み聞かせに携わった

 2020年3月、公園で青空読み聞かせをしている中原さんの様子を描いた絵

──やりがいがある分、とても難しそうですね。

「もう、責任重大ですよ(笑)。名作だとか、いいお話だとかじゃなくてもいいんです。本を通して想像の世界をワーッと広げ、なにか子どもたちの心や記憶、柔らかい感性に残るものを手渡してあげたい。読み聞かせのやり方は人それぞれで、声色を変え、顔の表情も使って伝える方法もあります。私は顔は見せず、声色もできるだけつけない。できるだけ『黒子』に徹することにしていました。私を通すことで、想像の世界を狭めたくなかったんです。新型コロナの緊急事態宣言が出る前も、公園で子どもたちを集めて本の読み聞かせもしましたが、子どもたちの目が輝いていましたね」

──想像する「余白」があるのは、本の大きな魅力のひとつです。

「私自身、小さいときに想像や空想の世界に入って遊びまわり、その世界に救われたことがたくさんある。今を生きる子どもたちにも、日々暮らしていて嫌な気持ちになったり、つまずいたりすることがそれぞれにある。そんなときは、想像の世界にどんどん逃げればいいし、そこで心を回復させてあげればいいと思うんです。それこそ、大人たちが『はるちゃん』を見てふっと現実を忘れ、息を抜いたり元気を取り戻したりして、また次の日からがんばるのと同じですね」

──いわば、大人たちのオアシスでもあった『はるちゃん』から約20年、中原さんが演じる役柄も変わってきたと思います。今後、取り組んでみたい役柄やお仕事はありますか。

「今は歳を重ねた女性の役自体が少ないですよね。海外のドラマや映画のように、中高年の女性が活躍したり、大人の女性に光を当てたりする作品が、もっともっと増えてくれたらいいなと思います」

──確かに、大人の女性が共感できたり、勇気づけられたりする作品が少ない。最近は、それが顕著に感じます。年齢を重ねた女性たちは、今、どういった作品を見ているんでしょう。

「かつては、向田邦子さんが描かれる世界など、大人たちがたくさん登場して、大人が共感できる作品がいろいろとあったように思います。悩んだり失敗したりするのは、若者たちだけじゃない。立派な大人だってちゃんと悩むし、つまずきもする。『大人も失敗していいし、また取り返せるんだよ。もっと楽になっていいんだよ』と、伝えられる作品がやれるといいですね。あぁ、やっぱり『はるちゃん』がやりたいってことなのかな(笑)」

 ドラマ『はるちゃん』から22年。20代だった若き女優は公私に渡って様々な経験を積み、大きくなって第二の故郷に場所に帰ってくる日は近いのかもしれない。

 中原果南さんが出演する舞台 大森カンパニー×長江健次 大森カンパニープロデュースvol.48 長江健次還暦記念公演『更地に、イモ欽Special』は7月12日(金)から18日(木)、LIVE HOUSE神戸チキンジョージで行われる。【公式HP】https://www.omoricompany.com/special

(了。第1回から読む)

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン