競技中の映像確認による解決は難しい

 広大なゴルフ場に競技委員は6人だけ。そして何十組にも分かれてプレーする競技の特性上、競技委員があらゆるプレーを目視することは不可能だ。

 多くのプロスポーツで導入されつつある映像判定を取り入れる余地もありそうだが、実は課題も多い。

 そもそもティーイングエリアとパッティンググリーン以外では、選手がコースのどこでプレーするのか予測できないので、固定カメラで撮影することは不可能だ。もちろん、テレビ中継でもすべてのプレーを撮ることはできない。仮に撮影されていたとしてもシステム上、すぐに競技委員が確認することは難しい。後続組も来る中で、映像確認のために選手を長時間待たせるわけにもいかないからだ。競技終了後に失格が発表されるケースがあるのも、そうしたゴルフ競技ならではの事情が背景にある。

 元ツアープロで2012年からJLPGAの競技委員を務める門川恭子が言う。

「問題をできるだけ速やかに解決させないといけないので、同伴競技者やギャラリーの情報をもとに“合理的な判断”で進めることが基本ですね。ビデオ映像を確認することもありますが、問題の解決はとても繊細で難しいです」(以下同)

2012年にJLPGAの公認競技委員となった門川恭子氏(筆者撮影)

2012年にJLPGAの競技委員となった門川恭子氏。1996年のプロテストに合格し、ステップアップツアーでの優勝経験もある元ツアープロでもある(筆者撮影)

 試合後にはすべての競技委員が集まって反省会が開かれる。全員が無線で繋がっているので、自分が関わっていない判定も含めて把握している。また、そのトーナメントで発生したルーリングはすべてにデータとして共有され、競技委員はいつでも閲覧できる状態にある。

「今後、同じようなケースが発生した時に応用できますから、情報共有は大切です。また、“このコースはこうしたトラブルが発生しやすい”と事前に知っていれば、翌年の同じ大会で心の準備もできます。

 最近はこの共有データベースでも映像や写真が活用されています。例えば、一部コースの不整箇所があり、修理地として認めることを決定したのであれば、その状況の写真を共有し、他にも同じ状態があった際に修理地として認める判断基準として活用しています」

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