2023年の最終QTでは注目の高校生プロが失格に
ゴルフの審判は選手自身。だからこそ選手たちにはルールに対しても慎重であってほしいと門川は語る。
2023年11月のファイナルQT(*)ではプロテストに合格したばかりの高校生プロ・菅楓華が5位でフィニッシュ。2024年シーズンの前半戦にフル出場できる権利を獲得したと思われたが、競技終了後にスコア誤記で失格となってしまった。
【*注/QT:クォリファイングトーナメント。翌年度のJLPGAツアーおよびJLPGAステップ・アップ・ツアーの出場資格を決定するためのトーナメント】
「その日の競技委員のグループLINEで流れてきたのは、“ホールアウト後に記者の質問に答えたホールのスコアと、提出したスコアカードの当該ホールのスコアが違っていた”ということでした」
菅は最終日ホールアウト後のインタビューで、「11番はボギー、14、15番で連続バーディ」と答えた。ところが提出したスコアカードには11番、14番をパーと記入していた(そのためトータルスコアは同じ)。インタビュー内容を知った競技委員会が本人に確認したところ、自ら話していたスコアが正しいと判明。11番ホールのスコアを過少申告していたため失格となった。
「QTでは(元プロゴルファーの)自分もいやというほど涙を呑んできましたが、これを突破すればツアーに出場する機会が一気に増える。プロゴルファー人生で最も重要な大会です。過少申告で失格になったのは本人の責任ですが、彼女が失格となってしまったことは本当に胸が痛くなりました」
最終プロテストまで進むレベルの選手は、技術だけでなく知識も備えているので大きなルールの誤解が生じることはないものの、一次や二次テストの段階では、現場でルール勉強会を行ない、規則の普及に努めているという。
※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。ゴルフの競技委員のほか、野球、サッカー、大相撲など8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。