「声だけの山田を受け入れ、見守ったクラスが、進級や卒業を経てどうなっていくか、結末はあまり決めすぎずに書いていきました。
山田の死を全員が悼んだとしても、時間と共に気持ちが離れていくのは当然だよなとか、人って会わないと忘れるよなとか、それも書きたかったことの1つ。それでも残るものは何かとか、人は何のために生きるのかという問いは、今後も小説を通じて考えていかなくちゃと思っています」
純文学かエンタメかなど、「読み方やジャンルは私が規定したくない」と言う。
「謎を忘れて没頭するのも、謎自体を愉しんでいただくのも、どちらも嬉しいので」
いずれにしろ読み口こそポップだが心に深い余韻を刻む、いい小説には違いない。
【プロフィール】
金子玲介(かねこ・れいすけ)/1993年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒。高2で小説を書き始め、その後も学業や仕事の傍ら執筆。文藝賞やすばる文学賞候補となるが受賞には至らず、「心が折れかけた時に仲間からエンタメも書いたらと勧められて。元々メフィスト賞出身の舞城王太郎さんや佐藤友哉さんの作品が好きだったので、応募してみようと」。昨年6月に本作で第65回メフィスト賞を受賞し、今年5月デビュー。作家専業となり、年内には第2作、第3作も刊行予定。166cm、57kg、A型。
構成/橋本紀子
※週刊ポスト2024年6月7・14日号