数々の名作を彩ってきた名脇役が、人知れず表舞台から消えていた。幾度も共演をしてきた盟友が、「意欲の低下」と「健康不安」が囁かれる“相方”について語ったこと──。
新緑の香りが漂う5月下旬の昼下がり。都内の住宅街を、スーツケースを引きながらゆっくりと歩く小柄な女性がいた。目深にバケットハットをかぶっているため、表情はうかがい知れない。
たどり着いた駅のホームでは、待合室のいすに静かに腰を下ろすと、1本、また1本と電車を見送る。彼女のまわりだけ、時の流れが異なっているように感じさせる光景だ。その女性は、個性派女優として知られる名バイプレーヤー、もたいまさこ(71才)だった。
「もう仕事したくない」
「これからも、本当に小さなことでもいいですから、人に何かを伝えられたらと強く強く願っています」
映画『それでもボクはやってない』で2007年に日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を受賞したもたいは、煌びやかなステージ上でそう受賞の感想を述べた。
長らく第一線で活躍し、多くの話題作に出演してきたもたい。しかし、2017年に2本のドラマと映画に出演して以降、女優としての活動が激減している。
「その後、2021年に放送されたドラマ『ペンションメッツァ』(WOWOW)まで、出演作はありませんでした。そして、この作品を最後に、現在まで3年ほど女優業から完全に遠ざかっています。コロナ禍の少し前から、『もう仕事をしたくない……』と漏らしていたこともあったそうです。行きつけの飲食店にも、ほとんど顔を見せなくなっているようです」(もたいの知人)
東京・渋谷区出身のもたいは、子供の頃から女優を夢見ていた。高校を卒業後、舞台を学ぶ専門学校の学費を稼ぐために百貨店に2年間勤務。1972年に渡辺えり(69才)と劇団を結成して、本格的に女優としての活動をスタートさせた。
才能はマルチで、1986年には出演した『タンスにゴン』のCMでの「亭主、元気で留守がいい」というセリフが、流行語大賞の銅賞を受賞した。