体内で”悪さ”をするとの指摘も
これまでマイクロプラスチックは体内に入っても吸収されず、便や尿として排出されると考えられてきた。だが前述したように近年の研究では、より微小なマイクロプラスチックが内臓や血管にとどまり、“悪さ”をする可能性が指摘された。
それを効率よく体外に排出する研究を進めているのが、東海大学海洋学部水産学科准教授の清水宗茂さんだ。清水さんは、ラットにマイクロプラスチックを混入したエサに、さまざまな成分を混ぜたものを与え、食後のラットの糞を調べて、各成分がマイクロプラスチックの排出にどれほど影響したかを調べた。
その結果、最も多くマイクロプラスチックを排出する働きが強かったのが「難消化性食素材」が混ざったエサだった。
「難消化性食素材は人間の消化酵素では分解されにくい成分であり、かつ食べても安全な物質であることから、トクホなどに用いられています。その代表例が食物繊維。実際に実験で食物繊維を混ぜたエサを食べたラットは、糞中のマイクロプラスチック量が最も多かった。食物繊維のなかでも、カニやエビから作られる『キトサン』は、マイクロプラスチックを排出させる能力が特に高いと考えられます」(清水さん・以下同)
なぜ食物繊維が有効なのか。清水さんが続ける。
「人工消化液にマイクロプラスチックと食物繊維を入れて実験すると、両者は凝集する性質があることがわかりました。おそらく、消化が難しい食物繊維とマイクロプラスチックが腸内でくっついて、そのまま便として排出されるのでしょう。もともと食物繊維には、肉などに含まれる余分な脂と一体化して便として排出する作用があります。マイクロプラスチックの性質は脂に近いので結合しやすいのかもしれません」
大切な命を守るためには、毎日の食生活で第6の栄養素といわれる食物繊維を摂取して、汚染物質を体外に排出することが肝要だ。
「根菜や海藻など、和食には多くの食物繊維が含まれているので、和食中心の献立を意識してできれば3食とも食物繊維を摂りたい。食事をする際は最初に食物繊維を摂ることで、糖や脂の吸収を穏やかにするだけでなく、効率的にマイクロプラスチックを排出することが期待できます」
清水さんはキトサンなどの難消化性食素材を用いて、体内に取り込んだマイクロプラスチックを排出する次世代型食品の開発をめざしているという。