通常のポートレート撮影とは勝手が違いすぎた(イメージ)

通常のポートレート撮影とは勝手が違いすぎた(イメージ)

「十数年前、当時の弊社はギャルやキャバクラ嬢向けの雑誌を作っていました。雑誌に使用する写真は、体を引き延ばしたり、顔を小さくしたり肌をなめらかにして……といった感じでとにかく修正だらけ(笑)。通常のグラビアや広告写真では決してしないレベルの修正をしていました。そうしないと、出演している雑誌モデルが納得しない。キャバの子たちは売り上げにも繋がるから必死なんですね」(増田さん)

 そんな折、増田さんの会社に飛び込んで来た依頼というのが、関東南部で行われたとある選挙の女性候補者からのものだった。

「知り合いの選挙プランナーを通じての依頼でしたが、修正の要請が多いのはもちろん、選挙候補者がうちに頼んでくるのかという驚きもありましたよ。仕上がった写真は、まるっきり別人になってしまったので、何度も大丈夫かと念押ししたんです。候補者はそのとき40代。にもかかわらず、ポスターは20代のような女性、という感じ。結局、ポスターは張り出され、候補者による演説会や討論会なども始まり、もう後戻りはできないと覚悟しました。そしたら案の定、トラブルが起きたんです」(増田さん)

 公開討論の会場に向かった件の女性候補者だが、あまりにポスターと実物が違いすぎて、他の候補者や現場責任者から本当に本人なのか疑われ、会場入りを止められてしまった。この対応に女性候補者が激高し、揉めている様子を有権者に見られたことも原因らしいですが、選挙は落選。あんなポスターを作らなかったらこんな火種はできなかったと思うと、複雑な気分です」(増田さん)

 トラブルの顛末を聞き、「何か悪いことに手を貸してしまったのではないか」と不安に駆られた増田さんは、確かめずにはいられなかった。

「もしかしたら、でたらめな写真を作ったために当局から突っ込まれるんじゃないかとまで考え、選挙管理委員会に相談もしました。まったく別人の写真を出しているなら問題だが、修正をかけているとはいえご本人の写真ですので、と笑われてホッとしましたが、こんなことで検挙されたらたまらないですよ」(増田さん)

本人だけが満足している25年以上前の写真

 商品やサービスを売る広告も審査基準があり、「ウソ・大げさ・まぎらわしい」などの誤解を与えたり適切でないものは、消費者に迷惑や被害を及ぼすようなことがないようにとCMやポスターなどで繰り返し呼びかけられている。広告ではなく選挙ではあるが、有権者にとってみれば立候補者のポスターは、商品の広告のように候補者を知る為のものであり、そこにウソや大げさな表現があってはならないはず。実際、ありもしない公約や年齢、学歴などのウソの経歴をポスターなどに記すのは公職選挙法違反に問われる可能性があるし、当選しても議員辞職に追い込まれた例が過去にあり、責任重大だ。

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