スマホでダレでも写真を加工できるいま、立候補者の加工写真はどのように見えているのか(イメージ)
とはいえ、加工しすぎた写真を選挙ポスターなどに使うことが、どのくらい責任に問われるか判断が難しい。目を大きくする、目元や口元、ほうれい線などのシワを消す、生え際を作るなどの修正は今のところ「ウソ」にはならないとされている。最近では、人気アニメ風のデザインを取り入れるなど、著作権者からツッコミが入りかねないような危なっかしいポスターさえ登場している。そうした”ゆるさ”が実際に許容されている現状だからか、もはや候補者や議員側には、ポスターで「盛る」ことに違和感を持つ人は少なく、別のトラブルも起きる。
「大ベテランの男性市議先生(80代)のポスターですが、どう見ても映っているのは60代くらいの男性なんですよ(笑)。15年ほど前から写真が変わっておらず、というかその時点でも10年くらい前の写真を使っていたはずです」
こう話すのは、千葉県内の某市議の後援会員・井本勇一さん(仮名・70代)。選挙のたびに、若々しいかつての大先生の姿を見て、ため息が出るとうなだれる。
「市議会のドンとまで言われる先生ですが、最近ではあまりにポスターと違いすぎると、嘲笑されています。毛量も違うし、体つきも以前と比べてだいぶコンパクトになり、堂々と写っているポスターの姿とはほとんど別人。辻立ちや演説会でも”誰だあのじいさんは”と言われる始末ですが、ご本人だけが満足されていて、スタッフは何も言えないのです」(井本さん)
清潔さやクリーンさをアピールするためには、確かに見た目が良いに越したことはないかもしれない。だが、そこに誠実さはあるのかと、有権者は選挙ポスターを通して見抜こうとするはずである。だが、満足しているのは本人だけで周囲が滑稽さを指摘できない”裸の王様”状態のポスターを使い続けている候補者は各地にいる。写真や映像があふれ、手元のスマホで簡単に加工や修正ができる現代を生きる目の肥えた有権者たちは、あざ笑っているのかもしれない。