ソファに座って話す女性

漏水被害を通して岸田さんが感じたこととは?(写真/五十嵐美弥)

「面白かったのは、仕事というのは役割の範囲を決めることなんだなと気づいたこと。つまり、自分がやらないことを決めるというのが、仕事なのだなと。

 漏水が起きた時、オーナーは海外にいてすぐ来られないし、管理会社は私たちは9時から18時の間に管理業務を任されているだけだから、それ以外の時間のことは知りませんってスタンスで、ぞうきんだけ渡して去るし。どこから水が流れているかさえわからなくて、上階の人が水道を使っていなくても汚水が漏れてくるんです。そんな状態が1週間も続くから、上階の人も自分のせいじゃないって確信し始めるし。

 ただ、これがまさに仕事なんですよね。明らかに困っている人がいるのに、全員が自分は当事者だと思っていない。もしかして、世の中のトラブルは全部そうなんじゃないかって。みんな自分のせいじゃないって考えているけど、現状は最悪の事態が起きている。

 会社の人に何かいやなことをされても、『自分の管理責任は上司にあるから、止めなかった上司が悪い』ってなることもありますよね。全員ちょこっとずつ責任転嫁しながら過ごすというのが仕事ではないかと思って」

 しだいに目の前で起こっていたことが、社会で起こる事件の縮図のようなものに見えてきたという。

「マスコミがさまざまな事件を報道するたびに『なんでこの人は反省しないの』とか『なんで他人行儀なんだよ』とか思うじゃないですか。でもきっと、単純に自分のせいだとみんな思えないんですよ。反省の気持ちがどうとかじゃなくて、実体験として自分はどうしようもなかったしな……で終わっちゃうんです。

 私、会社員だったときに、在籍中の後半は会社の業績が悪かったこともあって……。休みもないし、つらい気持ちになることもたくさん言われました。過労で倒れたときに、『なんで社長や役員はそんな他人事なん?』と憤っていたんですよ。

 でも今思うと、彼らも単純に自分ごととして捉えられなかったんだなと。そう捉えていない人に、お前が悪い!っていくら責めたとしても、逆に彼らは批難された被害者になるんですよ、実感がないから。頭でわかっていても感情がたぶん理解できていないから、まわりから責められて『なんで俺がそんなことで謝らなあかんねん』と思ってしまって、余計に退路が断たれて、事態が硬直するんです。

『責任者はお前だろ』って怒りは、おそらくあまり意味がない。怒りをぶつければぶつけるほど、反省せずに離れていく。漏水のおかげでそんなことに気が付きました」

相手の痛みに寄り添うことで糸口が広がる

 責任の所在を明らかにしようとしても何も解決できない。では、岸田さんはどうやってトラブルを解決するべきだと考えているのか。

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