自分の希望を明らかにしつつ、いい病院を選びたい。
進行がんを治療できる医師は名医
がん治療における“やりすぎか”“必要か”の判断の取捨選択をするうえで、年齢によっても治療方針を変えるべきだと、ひらやまのクリニック院長で介護施設を中心に診療を行う医師の森田洋之さんは主張する。
「年齢を重ねるほどがんの進行は遅くなるので、50代や60代のがんと80代以降のがんでは性質が異なります。また、高齢になるほど、体力や精神力の個人差が大きいため、治療法については個別的な対応が重要になってくるのです」
では、目の前の患者に多すぎず少なすぎず、適切な治療を施してくれる、あるいはあえて「しない」という選択肢を提示してくれる医師や病院はどう選ぶべきなのか。名取さんは「がん診療連携拠点病院で治療を受ければ、大きく外れることはない」とアドバイスする。
「最近の医療現場はEBM(根拠に基づく医療)が現場に浸透し、医師の直感ではなく、根拠のあるガイドラインに基づいた医療が徹底されています。もちろん、医師によって意見が異なることや相性の問題もあるので、不安があるときはセカンドオピニオンを取ってください。何よりも大事なのは、根拠に乏しい自由診療を受けないこと。そうした病院ほど、甘い言葉で手術や薬物療法を否定しますが、まどわされないでください」(名取さん・以下同)
患者に寄り添い、こちらの訴えに耳を傾けてくれるのも優れた医師の条件だ。
「いまの現役世代の医師は、患者と適切なコミュニケーションを取ることも医療の一部だと学んできています。患者に上手に接することができる医師は、きちんと教育を受けていて、腕もいいといえるでしょう。ひと昔前までは、言葉遣いは乱暴だが腕が確かという医師もいましたが、いまはそうした医師はほとんど存在しません。説明が丁寧で礼儀正しい医師を信頼してください」
岡田さんは、テレビやインターネットなどで発表されている「病院ランキング」の数値にまどわされないでほしいと話す。
「そうしたランキングの多くは、治療後の5年生存率や手術件数をベースに作られています。調べてみたところ、上位の病院ほど、進行度が低いがん患者を中心に治療している。それらの病院は対処の難しい進行がんの患者を受け入れていないところも多く、生存率が高くなるのは当然です。選ぶならばランキングの数値だけを見るのではなく、進行がんも含めた治療をどれだけ多く担当しているかを軸にした方がいいでしょう」
必要に応じて、医師が複数の治療法を提案してくれるかどうかも、見極めるヒントになる。
「正直なところ、監視療法の診療報酬は高くないので、医師や病院側のメリットは少ない。だからこそ、切ることを第一選択にしないような医師を選ぶといいでしょう」(中川さん)
ただし、治療に「正解」はない。医師に頼りすぎず、最後に責任を持つのは「自分」であることを心得ておこう。
「高齢で“治療したら、寝たきりになるかもしれない”と思うケースでも、ご本人の強い希望で手術をしたところ、不思議と元気になるかたもいます。治療や命に対する価値観は人それぞれ。大事なのは、治療の結果どう転んでも後悔が少ないように、医師の説明を聞いて、自分で考えて決断することです」(名取さん)
治療、根絶が必要なケースももちろんあるが、「共生」という選択肢があることを覚えておきたい。
(了。前編から読む)
※女性セブン2024年7月4日号