ライフ

【がん治療】欧米で広く取り入れられる、直ちには切らない「監視療法」 日本では国民皆保険制度で手術費用が安く「切りましょう」が基本に

どんな治療を選択すべきか、寄り添ってくれる医師の存在は重要。(写真/Pixta)

どんな治療を選択すべきか、寄り添ってくれる医師の存在は重要。(写真/PIXTA)

 検査でがんが見つかれば、「すぐに治療しなければ」と思うはず。しかし実際には、がんの部位や進行度、タイプ、年齢、体調、ライフスタイルなどによっては、治療がかえって悪影響を及ぼすケースがある。「治療しなくていいがん」「放っておいた方がいいがん」とは、どういったケースなのだろうか。【前後編の後編。前編から読む】

 過剰な検査が無駄な治療を生む一方で、その精度を生かし、適切に取り入れて「見守ること」も立派な治療として発展しつつある。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。

「欧米ではがんを直ちに切除せず、血液検査や超音波検査、CT、MRI検査などを定期的に受けて観察を行う『監視療法』が広く取り入れられています。甲状腺と前立腺に加え、乳管など乳がんが発生した場所にとどまっている『非浸潤性乳管がん(DCIS)』や膀胱がんにも監視療法を取り入れられるのではと注目されています。

 実際、アメリカで複数の研究を解析した結果によれば、リスクの低いDCISの患者を対象に約6年間追跡調査したところ、手術した場合としなかった場合で、生存率は変わりませんでした」

 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授の中川恵一さんは「腎臓がんの中にも“見守り”の対象になるものがある」と言う。

「がんの治療で有名な米メイヨークリニックの報告によると、発見時の腎臓がんの大きさが2cm以下なら、転移がある割合も、術後3年後に転移が見つかる割合もゼロだということがわかっています。監視療法は転移などのリスクがあるので、充分に注意を払って行う必要がありますが、腫瘍が小さい人、高齢者や持病などで手術を受けるリスクが高い人にとっては、積極的に検討すべき選択肢になるといえます」(中川さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン