1989年の第15回参院選、ミニ政党のひとつであるスポーツ平和党から比例代表区で初当選し、両手を上げてガッツポーズをするアントニオ猪木さん(中央)(時事通信フォト)
彼女の心配の通りになってしまうわけだがそれは過去の話、しかし「お祭り都知事選」はこの青島幸男から始まったと筆者も思う。1995年、阪神・淡路大震災の年だった。先のオウム真理教により地下鉄サリン事件も引き起こされた。政治もその前年に自民党が社会党と手を組み、新党さきがけと「自社さ政権」を立ち上げて政権に返り咲いた。冷戦の終結は右とか左とかの「思想」ではなく上か下かの「金」の時代となった。バブルはとっくに崩壊、まさに失われた30年とか、40年とか言われる私たちの「いま」の端緒であった。
こんな選挙は恥ずかしい
まさに「異様」としか表現できない今回の東京都知事選のポスター掲示板を二人で眺める、せっかくなので代わる代わる、いっしょに眺める方に話しかけてみる。
「こんな選挙は恥ずかしい、どうしてこうなったのか」(40代・会社員)
「選挙制度がおかしいし、時代にあってない、性善説じゃ無理」(50代・会社員)
「最近の国政だってそうじゃないか、いまの日本にお似合いだよ」(60代男性)
「日本人バカしかいない、面白すぎ。(観光の)外国人めちゃ笑ってた」(20代男性、学生)
「たった300万円で宣伝できるなら安いでしょう、プリウスより安い」(40代・経営者)
異口同音、多かった感想は「恥ずかしい」だった。あくまで都知事選なので「日本」「日本人」は主語が大きい気もするが直近の自公政権の惨憺たる印象もあるのだろう。また子どもは面白がると同時に既出の通り「あたおか」とバカにしていた。「俺は違う」と言いたいところだが、大人がバカにされても仕方のない現実なのは確かだ。
ちなみに「プリウスより安い」も確かに、と思う。新車のプリウスは一番安いグレードで約320万円(2024年6月時点)。単純比較ならプリウスを買う金額で都内一円にポスターが掲示できて、NHKで政見放送ができて、選挙公報はもちろん各種媒体で扱われる。
代理店の広告マンに聞けば「都知事選の300万円は格安」と話す。契約期間や媒体力にもよるが全国紙なら2段1/2で300万円する。全5段(いわゆる全面広告)だと1000万円を超える。テレビコマーシャルなら億だ。重ねるが媒体それぞれ、ケースバイケースとはいえ、この都知事選の供託金300万円が「自己宣伝」と考えれば格安なのはわかってもらえると思う。まして「出馬」と騒いで告示前に取り下げればその金は返ってくる。