電話ボックスの中に張られたピンクチラシ。東京・港区新橋、1988年4月(時事通信フォト)

電話ボックスの中に張られたピンクチラシ。東京・港区新橋、1988年4月(時事通信フォト)

 選挙ポスターをまるでクイズ番組『パネルクイズアタック25』や昔の電話ボックスにあったピンクチラシのように張り巡らした党の代表はこれらを「選挙フェス」と意気込む。それを面白がる人もまたSNSには普通にいて、誰しも法を犯してはいない。かといって「選挙ポスターに無関係の人物を掲載するな」「選挙ポスターを使って寄付名目で出演料をとって稼ぐな」「ほぼ裸で載るな」と細々と規制するのも「普通しない」からしなかっただけの話であり、それこそアメリカの「猫を電子レンジで乾かさないでください」とか「チェーンソーを素手でとめないでください」を都知事選で実行されてしまった、ある意味「性善説の限界」というか「知性の限界」と言っても差し支えないだろう。

 冒頭の彼女に訪ねる。「じゃあ都知事選は行きませんか」と。しかし彼女は「それでも、選挙には行くものです」ときっぱり言った。「それでも、選挙には行くものです」。そうだ、選挙は理屈じゃなく「行くもの」なのだ。「あの時代」を知る人にとって、選挙に行かないことは何をされても構わないと同義語だ。昭和の時代に70%を超えていたこの国の国政選挙の投票率は令和の現在50%がやっと、都知事選も前回選挙で投票率55%である。

お願いだから選挙には行ってください

〈国民が政治を嘲笑している限りは、その嘲笑に値する政治しか行なわれないし、国民はその程度に応じた政府しかもちえない〉

 松下幸之助の言葉だが、国民を「都民」、政府を「都政」に替えてもいいだろう。「俺は違う」「一緒にするな」は個人の勝手だが、筆者自身はそう思わない。この東京都知事選のポスター掲示板を都民として恥ずかしく思うし、やり場のない怒りもこみ上げてくる、と同時にどうにもできない自分の力のなさに情けなくも思う。

 それでも、声は上げるべきだ。

 だってそうだろう、誰を選ぶにしろ、都知事選は私たち都民の生活がかかっているはずだ、日本全体と言ってもいい。地方税収は一部国税化されて地方法人税などは国が全国に割り当てているため、東京の稼ぎがなければ多くの地方は成り立たない。その一極集中の是非はともかく決して東京だけの問題ではない、その東京の知事を選ぶ選挙がこの有り様だ。候補者がみなそうではないことは承知だが、やはり寄付名目で選挙ポスター枠を販売したり、撤去したとはいえほぼ裸の候補者でもない女性の写真を掲載したり、やはりそれはおかしい。おかしいものはおかしい、シンプルな話のはずだ。自由と平等の目的外利用はいずれ、私たちから自由と平等を奪う。

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