ライフ

【逆説の日本史】最近世間を騒がせた二つのトピックス「高野連の発表」「大東亜戦争の呼称」について考察しよう

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)

 ウソと誤解に満ちた「通説」を正す、作家の井沢元彦氏による週刊ポスト連載『逆説の日本史』。近現代編第十三話「大日本帝国の確立VIII」、「常任理事国・大日本帝国 その15」をお届けする(第1421回)。

 * * *
 一九一五年(大正4)十二月、インド独立の闘士ラス・ビハリ・ボースが日本から退去を求められた時点で、当時日本の進むべき道の有力な選択肢の一つであった「英米協調路線」。その是非について分析する前に、最近話題になった二つのトピックスについて触れさせていただきたい。「特別編」やさまざまな「脇道」に逸れてなかなか先に進めない状態が続いており、「早く先に行けよ」という読者も大勢おられると思うが、ここはご容赦願いたい。

 まず一つは、高野連(公益財団法人 日本高等学校野球連盟)による、「第106回全国高等学校野球選手権大会第2回運営委員会開催結果について」という公式発表についてである。同発表は、「阪神甲子園球場で8月7日に開幕する第106回全国高校野球選手権大会に向けた第2回運営委員会を4月19日に開き、試合を午前・夕方に分ける2部制を一部日程で導入するなど暑さ対策の取り組みを決めました」という内容で、酷暑対策の一環として大会第一日目~三日目の試合数を一日三試合とし、各試合を午前と夕方に分けて実施する「二部制」を導入。さらに「午前」の部と「夕方」の部の間も三時間以上空けて実施する、というものだ。

 ここに来て、ようやく頑迷固陋な高野連や朝日新聞社も腰を上げたということだろう。ただ、まだまだ甲子園開催に固執しているようで、これでは高校球児の健康に一〇〇パーセント配慮したとは言えまい。私がかねがね主張しているように、空調の効いたドーム球場に会場を移すか、あくまで甲子園にこだわるならば開催期間を延ばしてもいいから全試合ナイターにすべきだろう。腰を上げたことは評価するが、まだまだ商売優先の姿勢が目立つ、これで高校球児に犠牲者が出たら誰が責任を取るのか、と言っておこう。

 二つ目は、本連載の第一四一七回で述べたことと密接に関連する問題だ。〈なぜ「大東亜戦争」と呼んだのか 戦没者追悼式で自衛隊が投稿、浮き彫りにした課題〉という朝日新聞のウェブメディア「The Asahi Simbun GLOBE+」(公開日:2024.04.20)というタイトルの記事である。

〈陸上自衛隊大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊が4月5日、X(旧ツイッター)の部隊の公式アカウントで「大東亜戦争」という用語を使って投稿し、8日に削除した。投稿は、硫黄島(東京都)であった日米合同の戦没者追悼式を伝えた。木原稔防衛相は大東亜戦争という用語を使った投稿の削除について「一般に政府として公文書に使用していないことを踏まえた」と説明した。この問題について、OBを含む自衛隊の隊員らの反応は「硫黄島が激戦の地であった状況を表現するため、当時の呼称を用い、その他の意図は何らなかった」という木原防衛相の説明とほぼ同じだった。ただ、日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、自衛隊員だけではなく日本人全体が考えなければならない課題も浮き彫りにした。〉

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン